『地球へようこそ〜おっぱいからオゾン層まで赤ちゃんを守る50の方法』
グループなごん著 ブロンズ新社
1500円(税別)
神田イツヨさん
by
三好菜穂子
(REBORN第22号1999年1月より転載 取材/1998年12月)
環境ホルモン、電磁波、遺伝子組換食品etc...妊婦、母親を不安にさせる環境問題のタネはあとをたたない。でも、やみくもに落ち込んでいてもはじまらない。まずは、一人ひとりができることから実行してみようよ...と、この本では、環境汚染からわが子を守るための身近な50の方法を、子どもの成長段階に合わせて紹介している。本をまとめた「グループなごん」のメンバー、神田イツヨさんに話を聞いた。
●妊娠・子育て期は「環境問題」を考えられる
最大のチャンス!
三好 まず、この本を作られたきっかけは?
神田 グループなごんでは、91年に『日本の子どもたちが地球を救う50の方法』、98年春に『21世紀の子どもたちが地球を救う50の方法』と、2冊の子ども向けのエコロジー実践本を作ってきました。1冊めの本の発行時に比べると、最近の小学生はすごいですよ。日本で一番、身近な環境問題に取り組んでいるのは小学生じゃないか、というくらい。そこで、私も含めて、育児雑誌の仕事をしていたり、妊婦や乳幼児をもつメンバーから、次はママ&パパ向けのエコロジー実践の本を作ろうということになって...。
三好 妊娠や子育てを経験して、食の安全性や環境問題に目覚める人が多いですよね。
神田 妊娠・子育て期は「子どもに安全なものを選びたい」という気持ちから、環境問題を真剣に考える最大のチャンス。よく、子育て中は「社会とのつながりがない」と言われるけど、絶対そんなことはないですよ。むしろ、生活者としての感覚が一番スルドイ時期だけに、本当の意味で社会とつながっている時期だと思います。カップ麺のポリスチレン容器から環境ホルモンが出ていると騒がれ、カップ麺の消費が落ち込んだときに、あるメーカーではいち早く紙容器に変えました。「安全が保証されていないものは買わない」という消費者の行動が企業を動かしたいい例です。
●子育てもエコロジーも一人ではできない
三好 神田さんご自身、お子さんができてから変わりました?
神田 それまではバリバリの仕事人間でかなり不規則な生活をしていましたが、妊娠した途端に「私が赤ちゃんを守らなければ!」と強い気持ちにつき動かされて、自然食品店で売っているものしか安心できなかったりと、極端に変わりました。でも、「自分さえ安全ならば」のエゴロジー(笑)では問題は解決しない。保育園探しなど子育てを通して、それまではまったく意識しなかった地域を強く感じたこともあって、
子育てもエコロジーも一人でがんばっていても続かない、地域やネットワークが必要だと痛感しました。
三好 本を作るうえで、気をつけたことは?
神田 忙しいお母さんたちが、気になったときに目次を見てさっと読めるように各テーマとも見開き2ページでまとめました。もちろん、2ページでまとめられるような内容ではないのですが、この本はあくまでも入門書。ここを出発点とし、読んだ人が行動できるように、各団体や共同購入などのリストを巻末につけました。
三好 「参考文献」も3ページにびっしり書かれています。取材では、とてもご苦労されたのでは?
神田 環境問題は、それぞれの分野で専門性が高いのでメンバーはかなり勉強しました。難しい言葉をいかにわかりやすい言葉に置き換えるか。これには雑誌での仕事の経験がずいぶん生きましたね。ダイオキシンをはじめ、まだ専門家の意見もさまざまで、答えが出ていない問題が多いだけに偏りがないように気をつけ、「少しでも不安なものは、本当に必要かどうかちょっと考えてみよう」というスタンスでまとめました。
●極端な反応を示す、今のお母さん
三好 助産婦、小児科医や生産者などのインタビューもあります。
神田 現場で実際に環境問題に取り組んでいらっしゃる方のお話は、とてもおもしろいです。「おっぱいにダイオキシンが含まれている」というニュースが流れると、おっぱいをやめてミルクにしてしまうお母さんがいます。問題は、おっぱいを赤ちゃんに飲ませないことではないのに...。「今のお母さんは極端な反応を示す」という保健所長の言葉が印象的でした。アトピーにならないためにと妊娠中から牛乳・卵をいっさい断ったり、赤ちゃんが触れるものすべてを薬品で、殺菌消毒しまくる。育児や家事がラクになったのと引き換えに、さまざまな環境問題が起こっています。でも、昔のような不便な暮らしに後戻りすることはできませんよね。それでは、どうしたらいいのか?
妊娠・子育て期に「環境問題」に気づいたママやパパが少しでも身近なことを実践しはじめたら、これが大きな力になること、間違いないと思うんです。
三好 将来に対して悲観していますか?
神田 子育てをする母親にとって決してラクなことばかりではありませんが、悪いことばかりでもない。今までのひずみに気づいて、流れを変えて行こうという動きもあります。私はむしろこれから良くなっていく、と期待しているんですよ。
インタビュ−目次へ