米国CIMS 「マザー・フレンドリー産院の10カ条」 資料集

CIMSとマザー・フレンドリー・チャイルドバース・イニシアティブ

訳・永田芳枝
英文はCIMSのホームページで読めます。
 http://www.motherfriendly.org.

CIMSの使命


CIMS(キムス妊娠と出産の環境とサービスを改善する連合)とは、は、母親と赤ちゃんと家族のケアと、より良い人生を考えるために集った個人と全米規模の組織である.私たちの使命は、出産の結果を改良し、副義的にコストを削減する、健康モデルのマタニティ・ケアを推進することである。この、母親、赤ちゃん、家族に優しい、科学的証拠に基づいたモデルは、経費のかかるスクリーニング、診断、治療プログラムに変わるものとして、予防と健康であることに焦点を定めたものである。

はじめに

考慮したい事


アメリカ合衆国は他の先進工業諸国と比較しても、はるかに多くの経費をかけて妊婦及び新生児のケアを行っているが、この国では、アフリカ系米国人女性の周産期疾病罹患率、周産期死亡率、そして出産死亡がヨーロッパ系米国人女性と比較して4倍も大きい.


他の先進工業国においては、助産婦が莫大な数の大多数の出産に立ち会っており、妊娠期及び出産に良い成果をあげているが、アメリカ合衆国では、助産婦はわずか数パーセントの出産の第一立ち会い者に過ぎない.


今日の妊婦と新生児にとって、科学的な証拠に基づいていない不適当な技術の導入と常軌的手順(ルーティン)の導入が、高コストでより劣る出産の結果をもたらす一因となっている.


技術に依存する例が増えるにつれ、本来の女性固有の能力、つまり介入のない出産をする能力に対する自信を減少させた.


完全な母子の協力関係は妊娠期に始まるが、母親と子に対する産科治療ではそれぞれが矛盾した要求を抱えた、分離した単体として考えられている。

母乳哺育は最善の健康と発達における利点を、新生児と母親の両方にもたらす事が科学的に示されているにもかかわらず、生後6週間の時点でも米国では極少数の母親のみが完全母乳哺育している。(訳注:完全母乳哺育:生後、母乳以外のものを一切与えないで、赤ちゃんの必要に応じた無制限の授乳をすること)

現在のアメリカ合衆国における社会構造により、マタニティケアは必ずしも平等に行われてはいない.少数民族の女性たち、保険を持たない女性たち、保険の契約により出産場所や専門家を指定されてしまう女性たちには、健康管理の情報が平等に行き届いてはいない。この状況をふまえ、CIMSの条文の批准に署名した会員(団体、個人)は、母親に優しく平等なマタニティサービスの提供を受けられるように次の原則を明確にし、広める事にした.


原則

われわれは次に示す事項が母親にとって優しいケアとなる礎石となることを信じるものである。


出産プロセスの正常性
出産は普通で自然でそして健康なプロセスである.


女性と赤ちゃんは出産・誕生にとって必要な知恵を生まれながらにして持っている.


赤ちゃんは生まれる瞬間からすでに知覚可能であり、存在を認められ、相応しい扱いを受 ける事が最も望ましい.


母乳哺育は新生児と幼児にとって、最善の食物を提供できる行為である.


*助産婦のケア・モデルは、正常なお産のプロセスを守り、援助する.助産術は大多数の 女性の妊娠期及び出産におけるもっとも適当な方法である.


エンパワーメント


一人の女性が出産して赤ちゃんを育てる能力や自信は、出産する場所の環境や出産した女性をケアするすべての人によって増幅される事もあれば、損なわれる事もある.母親と赤ちゃんは明らかに妊娠期間、出産期間そして乳幼児期にも相互依存の関係にある.この相互に連結している関係は、生命の維持に必要不可欠なものであるので、尊重されることが重要である.妊娠、出産・誕生、そしてその後に続く時期は、人生の画期的事件ともいえる時期である.これらの人生経験は女性にも赤ちゃんにも、そして父親にも家族にも、心から深く影響する上、社会に対しても重要で永続的に影響する.


オトノミー
すべての女性は次のような機会を持つ事が望まれる.


女性にとっても、家族にとっても、その女性の年齢や事情、(状況)を考慮した上で健康的 で喜ばしい出産の経験をする機会


女性の望むように、その女性が安心して産める環境の中で、精神的にも安心できてプライ バシーが守られ、個人的な希望が受け入れられながら出産できるような機会


女性が妊娠、出産、子育てに関する情報を最大限得られる機会、そして出産に関する情 報網や、ケアする専門家や、研究から最新の情報を手に入れる事ができるような機会


女性が説明の上での同意、又は説明の上での拒否をする権利に基づいて、妊娠期、出  産期、産後期に勧められるすべての診療行為、薬、検査による利点と欠点(リスク)につい て、正確で最新の情報を全て知る機会


女性自身がひとりひとりの内面に持つ価値観や信念に基づき、何が自分と赤ちゃんにとって 最善なのかを選択をする時に、説明と支援を受ける機会


害を与えない


妊娠中、出産期、産後期の常軌的医療介入(ルーティン)の無い事が望ましい.多くの基本的な医学的検査、診療行為、技術、薬品は母親と赤ちゃんに何らかのリスクがあるので、明確で科学的な根拠無しに行わない事が望まれる.もしも妊娠期間、出産時、産後期に合併症が発生する場合に、医学的な治療行為を行う時にはそれは科学的証拠に基づいた方法が最も良い.


責任
ケアする人たちは、それぞれ母親と赤ちゃんが受けるケアの質に対し責任を持つ。

妊娠中の診察はお産のケアや、準備をする人人の必要に応じて行われるべきではなく、母親と赤ちゃんの必要に応じて行う方が良い.

それぞれの病院、バースセンター、助産院などの施設は、科学的な証拠に基づき、効果と、リスクと母親と赤ちゃんに対して医学的な処置を施した割合について、定期的に評価と反省を行う責任がある.

社会、つまり行政と保健機関は全女性がマタニティ・サービスを確実に受ける事ができるようにする責任がある.そのサービスの質について聞き取り調査を実施する事が望まれる.

個人は結局自分と子どもが受ける健康の管理について知識を持ち、選択をする責任を負う.

これらの原則が、マザー・フレンドリーなマタニティ・サービスを支援し、守り、推進する「マザー・フレンドリー産院の十カ条」を生み出した。

 


第8回「いいお産の日in 東京」シンポジウムで配布した資料を転載したものです。
(若干、語句の変更を加えてあります)

 

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