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助産師が足りない
もっと身近にミッドワイフ

文/熊手麻紀子  紙REBORN15号掲載  2005年12月

地域の診療所に助産師が足りません。診療所自体も年々減少しています。どこに行ったら助産師さんに会えるでしょう

●いきいき診療所ここにあり

2005年10月15日東京都看護協会主催で、シンポジウム「診療所と助産師が手をつなごう〜よいお産をめざして〜」が開かれた。そこで、診療所での出産経験のある古澤さんは、「私の求める優しいお産が診療所にはありました」と語った。健診のときも、入院中も、助産師たちは度々そばにきて声をかけてくれる。助産師というより女友達のように親しみあうことができた。どんなときも心がこもった対応をしてくれた」という古澤さんのお産はぽっかぽかの思い出だ。

古澤さんが出産したのは、埼玉県川口市にある渋川産婦人科医院。年間分娩件数約 380 件。母親学級や両親学級、自然分娩、フリースタイル出産、立会い出産、出生直後からの24時間母児同床、母乳育児、乳児健診や乳房外来を実施。

常勤医師1名、非常勤医師2名、助産師 11 名、看護師3名、看護助手5名。正常分娩は医師と連絡を取りながら 24 時間助産師の手によって守られている。院長は助産師を信頼し多くのことを任せてくれる。病院の分業化された業務とは違って、妊娠・分娩・産褥・育児までトータルにケアを実現できる。

担当制こそないが、妊娠期から何度も顔をあわせるチャンスがあり、妊婦と助産師は親密な関係を築いている。妊産褥婦との関わりが多い分、その後のつながりも長く、ご近所のママたちが気軽に子連れで立ち寄ることも。まさに地域の人たちの身近な診療所だ。

渋川産婦人科医院  http://www.shibukawa.org/


渋川産婦人科医院(埼玉)の沼口正英院長とスタッフ

●経験を活かせる診療所

渋川産婦人科医院の師長である窪田助産師は、勤続して4年目。総合病院に10年勤め、出産・子育てで3年間休業後、都内の診療所や保健センターの非常勤助産師として活動を再開した。子どもが小学生となり、家族の応援を得て、現在の渋川産婦人科に常勤として就職。同僚の助産師・看護師スタッフも、総合病院や大学病院の産婦人科やNICU、周産期センター、保健センターなどでの勤務経験が 6〜10年間以上の経験豊かなメンバーだ。一昨年あたりからスタッフの退職者が少なくなり、チームワークも充実している。

助産師が多く活躍することで、医師は業務を効率化でき、よりハイリスクの妊産婦の診療に集中できることだろう。しかし、診療所に11人もの助産師がいることは珍しい。人件費が大きくて経営が大変ではないか。余計な心配だと思うが、院長の沼口医師に「なぜ助産師を多く雇っているのですか?」と聞いてみた。すると答えは一つ、「うちは産院ですから」と。そのシンプルなお答えに私はぶるっと感動した。

●診療所に助産師が足りない

平成 15 年現在、日本の出生数は年間112 万人で、その出産場所は52.2 %が病院、46.6%は診療所。ところが、就業している助産師( 25,724 人)の就業先は病院に68.7 %、診療所に17.6 %となっている。約半数近くのお産が診療所であるのに、助産師は全体の 17.6% しか勤めていない。中には、助産師が一人未満の診療所もあると聞く。産婦の分娩にはいったい誰がつき、おっぱいのケアは誰がしているのだろうか?

  診療所を経営する医師の多くは、助産師の募集に苦戦している。診療所は、「カ ンファレンスや研修がなく、勉強できない」「独立した助産業務がしにくい」「年配の看護師や准看護師がいて働きにくい」「勤務時間が守れず休暇を取りにくい」「給料が安い」等、悪いイメージがあるようだ。しかし、実際に診療所で働く助産師からは、「助産師としてのスキルを磨ける」「より自然な出産に関われる」「妊産婦とより積極的に関われる」等の声があがっている。志の同じ人たちとなら、診療所こそ助産師の力をより発揮できる場なのではないだろうか。

●身近で深いかかわりを

私は育児サークルで「お産の振り返り」をテーマに語り合いをすることがある。医療者の豊かな関わりの中で出産した人からは、学んだこと、心に響いたこと、身についたことなど、言葉が表情豊かに溢れてくる。関わりが薄い中で出産した人からは、非常に言葉が少ない。それほどに、出産のケアは心に深く刻まれる。

子育てを身近に見る体験が浅いまま、親になっていく今のお母さんたち。母や祖母の時代のように、精神的にも身体的にも丈夫ではなく、お産や子育てに自信がもてない人がとても多い。だからこそ今、一人一人の妊産婦にこれまで以上の手厚いケアが必要だと思う。助産師には頭も体も緩ませる知恵と、女性の持つ力を引き出す愛情をぜひ提供してほしい。 かかりつけ医や助産師は、人々の身近な場所にいなければ意味がない。身近で診察や相談が受けられたら、異常の早期発見にもなり、安心して暮らすことができるはず。顔の見えるおつきあいの中で、妊娠・出産・産後が分断されずに一連でケアされたら、どんなに生み、育てることが豊かになることか。それこそが、少子化に歯止めをかける最短な道だと思う。 

●一人でも多く、助産師に復活してほしい!

第9回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」によると、助産師は昭和32年には55468 人いたが、平成15年には25724人。看護師、准看護師が10倍以上に増加しているのに対し、助産師は半減している。全国分娩取り扱い施設は 6473 施設で、必要な助産師数は51784人のところ、現在届け出されている産科施設就業助産師数は 23819 人で、 27965 人不足となる。これだけの数が不足と言われる中、平成16年の助産師養成数はわずか約 1600 人で、潜在助産師(働いていない助産師、又は看護師として他科で働いている人)は約25000人と言われている。

日本のどこに住んでも、大病院・診療所・助産所のどこでも、お産と子育ての専門家である助産師のケアを受けられるように、大至急、助産師養成数を増やし、潜在助産師の再就業を呼びかけていって欲しい。

助産師の皆さん、同級生は今どうしていますか?「また助産師やろうよ」とぜひ声をかけてほしい。私生活でも様々な経験を積んだ方々に、ぜひまた助産師として力を発揮して欲しい。

助産師の皆さんがど〜〜っと動いたら、お産がよくなる。お産がよくなれば、ど〜〜っと幸せが増えるのだから。

各地で潜在助産師のための研修会が開かれています。
研修会および、就職の相談は
(社)日本助産師会 tel:03-3262-9910
または都道府県のナースセンターにお問い合わせください。 
e-ナースセンター

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助産師が足りない  『過去から未来へ』 文/白井千晶

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