日本の開業助産師 お産扱いの実際 三宅はつえ(REBORN・開業助産師) |
出張開業助産師のお産扱いは、だいたい1本の電話で始まる。「あのぉ〜、自宅出産したいんですけどぉ」とか「せんせー、赤ちゃん出来たから、お家で産みた〜い」(准看護学校教え子)とか、このごろでは携帯メールからも「お義姉さんが自宅出産した話を聞いて、わたしもお願いしたいな〜ってメールしましたぁ」といった具合だ。 さて、電話があると、まずお産のなんたらというお話が始まる。自宅出産できるのはどういう方か、どういう方が出来ないのか、健診はどんなふうか、病産院を受診して頂くのはどういうときか。費用はどのくらいで、何を準備したらいいのか。ざっとお話しして、アポをとる。実際にお会いして詳しくお話しし、そこでバックアップの病院を受診していただいて妊娠初期の検査一式を受ける、とまぁこんな具合だ。 今までにお産を受けられないとお断りしたのは気管支喘息既往、外陰部静脈瘤、肥満、などの問題があった方だ。「助産所のガイドライン」の基準より厳しいけど自宅出産は助産所でのお産より、ある意味リスキーだから基準は厳しい方がいいのだと思う。 妊娠初期の検査一式をクリアしたとしても、お産にはまだまだ遠い。途中で逆子になって治らなかったら病院での出産になるし、後期の貧血があまりに低かったら、やはり病院でのお産をお勧めしたい。もちろんそうならないために食事のお話や日常生活で気を遣うことの説明、そして受診して投薬を受けるなど出来る限りの手を尽くす。原因不明の腹痛で38週に病院出産に切り替えた方もいた。最近では妊娠後期の膣培養検査まで、どうなるかわからないのが本当のところ。道のりは長いのだ。 お産までたどり着くと、いよいよと気持ちが引き締まる。赤ちゃんが生まれるまでは、とにかく心音が気になり、無事に産まれた後は胎盤が出るときの出血が気がかり。無事にお産が終わると、今度は赤ちゃんの黄疸と体重減少、それに母乳が十分にでるかどうか気をもんで、産後1週間が終わる頃にやっとホッとできるのだ。お産に「もし」はつきもの。 すべての分娩は救急を孕んでいる」という言葉を否定できる人は少ないだろう。そして「お産には命がかかっている」という思いで出産する人は、たぶん少ない。一昔前なら「女は棺桶に片足をつっこんでお産をするのだ」と言われていたものだけど。 今年の日本助産師会通常総会で「助産所のガイドライン」が採択された。これは搬送する側の助産師と搬送を受ける側の産科医の共通言語だ。基準が細かすぎるとか助産師の助産診断能力を軽視しているという声もあるが、ガイドラインが目指しているのは「安全な出産」であることをしっかりと考えてみたいと思う。
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