三宅はつえ(出張開業助産師) |
昭和23年に制定された「保健婦助産婦看護婦法」。それぞれの「婦」の字が「師」の字に置き換えられたのだ。日本看護協会は、平成3年以来この問題に積極的に取り組んできた。その意図するところは「性別による相違をなくす名称の統一」ということだ。たしかに保健婦(士)、看護婦(士)、准看護婦(士)には男女それぞれが存在したが、助産婦職は現在のところ、女性しか存在しなかった。では、助産婦職にとって、このことは何を意味するのだろうか。 この十数年、繰り返し問題になっては消え、問題になっては消えている「男性助産士問題」。当初「名称変更」は「男性助産士」とセットで法案提出される予定だった。それなら看護職は、それぞれに男女ともに存在する職種として「性別による相違をなくす名称の統一」ということが生きてくる。ここで世界に目を向けてみれば、先進国と呼ばれる国々にはほとんど助産士が存在する。1974年に初めての男性助産師が誕生したオランダでは、約1400人の助産師のうち、50名ほどが男性だという。保助看法の名称変更は、どうしても「男性助産士問題」と切り離して考えられるものではない。 そして、その先にあるもっと大きな問題である「看護三職の一本化」に目がいってしまい、何をど うしてよいのやら、だんだんわからなくなる。 「看護三職の一本化」とは、戦後GHQが打ち出したプランだ。敗戦当時、アメリカには助産婦制 度がなかったので、助産婦は看護の中に入れ込んでも不都合ないと考えたのだろうか。そして、この プランは日本看護協会の中に受け継がれ、保健婦・助産婦・看護婦の業務を併せて行える「看護師」 という新しい資格の実現に向けて動き続けている。今回の「婦」から「師」への変更は、この三職統 合への第一歩とも考えられる。 百歩譲って、助産婦の名称も助産師もなくなったとしても、教育内容が今より充実し、WHOが推奨 する「学生の分娩介助実習数:50例以上」なんてことになれば、それこそ歓迎する事態といえよう。 現在の助産婦教育の中では、その介助例は「10例をめやすに」で良いことになっているし、実際、在 学中の分娩介助例2〜3例という話も聞こえてくる。数をこなせばそれでいい、という話ではないが、あまりに少ない介助例では、卒後の現場教育に非常に多くを期待しなければならない。
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