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母子同室

REBORN第12号(1996年7月発行)より

 本家アメリカでは少なくなった母子分離ですが、日本ではまだ根強く残っていて、赤ちゃんが泣くところを一度も見たことがないまま退院する人もいます。決められた授乳時間以外ずっと離れている完全分離型から、出産後片時も離れない完全同室まで−−病院によって形はさまざまです。お産選びは、ここまでしっかり選びたいもの。

リボーン紙購読会員を会員番号より無作為に選んで電話取材したものです。紙媒体のREBORNでは発言者の実名を載せましたが、ここでは個人情報を守るため匿名としました。構成/河合蘭、 文/小栗久実子、三好菜穂子

 出産体験者への質問

 ・同室でしたか。何日目からでしたか。
 ・それをどう感じましたか。
 ・どんな説明を受けましたか。

 医療者への質問
 ・同室ですか。通常何日目からですか。
 ・母親に選択の余地がありますか。
 ・その状況をどう感じていますか。

出産体験者に聞きました


●産婦人科医院で第1子出産(奈良県)
・通常は最後の1日は同室になるが、我が子は黄疸が強かったため、退院までずっと異室だった。
・赤ちゃんが泣いたら部屋まで連れてきてくれたし、あいだが1時間しかあかなくてもこまめに来てくれた。また、夜は泣いても、疲れていて寝たいときには寝かせてもらえた。赤ちゃんが見たいときには好きに見に行けたし、満足している。退院して急に赤ちゃんと一緒になるよりは慣れておいた方がいいので、同室を経験しておくのも悪くないと思うが、それほどこだわらなくてもいいと思う。

●(岐阜県の)産婦人科医院で第1子出産 (愛知県) 
・退院まで異室。
・入院中は授乳の時間に赤ちゃんに会っただけだったので、退院して家に帰るまで、赤ちゃんがあんなに泣くものだとは知らなかった。退院後、母乳についても苦労し、本を読んだりして勉強。第2子(現在妊娠中)は助産院で出産し、生まれてすぐから母子同室で赤ちゃんがほしいときにおっぱいをあげたい。
・説明はなかった。

●総合病院で第1子出産(山形県) 
・通常、初産婦は産後2日目から、経産婦は翌日から同室。私は出産時の出血多量で2日目になってもヨレヨレ状態だったため、「同室は無理じゃないか」と言われてしまった。でも、なんとしても同室になりたかったため、「私は元気です!」とアピールしまくり、ナースセンターに赤ちゃんが見たいと通いつめたりして「あなたは同室のほうがよさそうね」と言ってもらうまで頑張った。その結果、2日目から同室に。途中、熱が出たりして頭が痛くなったこともあったが、それを言えば子どもと離されると思い、缶ジュースで冷やしながら必死で耐えた。
いま思えば「無茶をしたなー」と思うが、「母は強し」の楽しい思い出。

●総合病院で第1子、第2子出産。自宅で第3子出産。(育児相談を主にする助産婦)(愛知県)
 ・第1子、第2子は出産8時間後から同室。第3子は出産後すぐからいっしょ。 
・母子同室だと、はじめの2〜3日は赤ちゃんが泣きっぱなしで苦労するが、だんだん母親も慣れてくるもの。退院して初めて赤ちゃんといっしょになるとパニックになる母親もいる。出産後すぐから母子がいっしょにいることは、心のつながりもできやすい。が、さまざまなケースがあるので、こうしなければならない、とは思わない。出産した病院は、昼間でも母親が疲れたときは赤ちゃんを預けられたのでよかった。

産婦人科医院で第1子出産。(東京都) 
・出産直後から退院まで完全母子同室。 
・非常によいと思った。水中出産で、生まれてすぐ、胎盤の出る前に最初の授乳をすることもできた。生まれてすぐから一緒にいることで、母子の一体感が味わえたとともに、新生児の世話をごく自然に覚えることができた。子どもの要求にすぐに応えられることは、素晴らしいことだ。 
・説明書をもらった。「完全母子同室制をとっている。これは、母乳育児には欠かせないことである。出産して2日ほどは母乳はほとんど出ないかもしれないが、それでも吸わせることで、どんどん出るようになるので、糖水やミルクを飲ませたりせず、頑張りましょう。ここでの食事は母乳のために質素になっています」というようなことが書いてあった。

●産婦人科医院で第1子出産(17年前)(東京都)
・母子別室で、授乳のときだけ新生児室にいった。
・帝王切開での出産で、自分の体のことで精一杯の状態だったので、それどころではなかった。全員、母子別室だったが、よく寝て体を休められるように、との配慮もあったと思う。
・なし。

●コウ・カウンセラー(出産経験はないが、これから出産を考えている立場として)(岩手県)
・病院で出産することをまったく考えていないので、生まれてからずーっと一緒にいるんじゃないかな、と思っている。
・出産した知人を見舞いに病院に行ったところ、お母さんと別に赤ちゃんだけが、新生児室に寝かされている光景を見て、不自然に感じた。本人は「病院の方針だから」とあまり疑問に思っていないようだったが・・。

●第1子、2子ともに助産院で出産(福岡県)
・第1子、2子ともに、生まれた直後からセミダブルのベットで、ずっと添い寝。
・おっぱいを欲しがるときに、欲しいだけあげられるのがよかった。出産した日とその翌日は、子どもが寝なかっため、自分も全然寝られずたいへんだったが、つらかったのはその2日間だけ。いつもそばにいて、顔を見られるので『かわいい』という感情が芽生えてきた。
・とくに説明はなかったが、出産する前から、私自身、母子同室を希望していた。

産婦人科医院で第1子、2子を出産(神奈川県)
・本来なら翌日からの同室だったが、第1子の出産時に精神的なショックを受け、自分から同室を拒否してしまい、3日目から同室にしてもらった。
・離れていることで、かえって不安になってしまったと思う。同じ医院で出産した第2子のときは、生まれた直後から一緒にしてもらったが、年配の看護婦さんが「お母さんの体を休ませなくちゃ」と、連れていってしまいそうになったというハプニングも。出産後、母子が引き離される哺乳類は人間だけ。一緒にいることが、母親の精神安定になると思う。
・出産に関しての希望は事前に聞いてくれたが、出産後に関しての説明はまったくなかった。

●現在、第1子の妊娠8ケ月。自宅出産の予定。(福島県)
・自宅出産なので、生まれた直後から、一緒にいる予定。
・母子が一緒にいることは、必要なことだと感じている。大変だとは思うが、お互いにとっていいことだと思うし、母親にとっては、親としての自覚も出てくるのでは? 何か異常があったときのために、これから病院も受診する予定。もし、医療機関で出産することになったら、おる程度はそこの方針に従うつもりだが、できれば同室にしてほしい、と考えている。

インターネットで頂いたご意見

●産婦人科医院で第1子出産(千葉県)
・同室でした。2日目からでした。
・初めての出産だったので、そんなものなのだろうくらいにしか感じませんでした。
・1日目はママの体をゆっくり休めることを考えるように言われました。2日目からは赤ちゃんといっしょになり、休む暇がないので今のうちにたくさん寝ておくようにいわれました。また、1日目に哺乳ビンでミルクをあげて、うまく飲めるようになったら2日目から同室になるが、赤ちゃんやママの様子次第では別室が長くなることもあると説明をうけた。

第1子を助産院で出産。小学校教員(山梨県)
・産後すぐ同室でした。
・赤ちゃんがとなりに寝ているため常に様子がわかる安心感と、何よりも私の子どもが隣にいるという幸せを感じることができました。また生まれたばかりの我が子の世話を通し(便の様子、泣き方、授乳など)、人の成長をみることはもちろん、その生きる力強さや体の仕組のすばらしさを感じることができました。
・母乳育児の重要性から、そして家族の絆を深めるためにも母子同室にしているとのこと。夫は、会社の帰り8時過ぎに来て10時に帰るなどということもありましたが、快く受け入れてくれました。

医療者に聞きました



病院勤務助産婦(和歌山県)
・母子別室。
・ない。
・私の考えとしては、母乳育児やとくに初めてのお母さんが、愛着形成を計るためには、母子同室のほうがよいと思う。ただ、勤務先の入院施設が、産科と婦人科が一緒な上に、婦人科の方が床数が多いので、感染症の問題などを考えると、改築しない限り難しい。

病院勤務助産婦(パート)(愛知県)
・3日目の朝から。
・ある。希望があれば初日からでも(あまりいませんが・・)。
・以前の勤務先では母子完全分離で、父親ですら、入院中は一度も赤ちゃんを抱っこできないような状況で、母親も授乳時以外は赤ちゃんの様子がわからないので、不安を抱えたまま退院する方が多かった。今の勤務先では、入院中に赤ちゃんの扱いに慣れて、多少の不安はなくなるので、初産婦にはとくによいと思っている。

元病院助産婦。新生児訪問、保健指導を中心のフリー(愛知県)
・以前、勤めていた総合病院では、入院中は完全別室。
・なかった。
・何より母乳のことを考えたら、母子同室が望ましい。だが、勤務していた病院は、お産の件数が月80〜100件と多く、赤ちゃんのベットを入れるスペースさえなかった。 新生児訪問では、赤ちゃんの対応に困っているお母さんの様子を目にすることが多い。保健所の母親学級では話すことに限界があるので、同じ思いを持つ助産婦3人で『いいお産の教室』をはじめ、そこでは母子同室をすすめている。

元病院助産婦。現在、休職中。(兵庫県)
・以前、勤めていた総合病院では、母乳指導に力を入れていたため、出産8時間後から母子同室。
・ある。
経産婦さんの中には「入院中すらいラクにさせて」という理由で、同室を断わる人もまれにいた。
・母子の相互作用を促したり、母親も新生児のいろいろなことがわかるので、退院後の育児にもいい影響を与えると思う。お産で時間がかかった人が、赤ちゃんと接触することで「疲れがふっとぶ」と言ったのが印象的だった。

保健所助産婦(元病院・助産院助産婦)(神奈川県)
・病院について=退院まで異室。母親は夜間授乳に「疲れているので行けない」と言い、少しでも赤ちゃんと離れて身体を休ませたいと思う人が多かった。助産院について=生まれてすぐから退院までお母さんと一緒。そうしたいと思う人が助産院で産むようだ。
・母親が赤ちゃんの世話をすれば、赤ちゃんひとりひとりにあった育児ができるし、母親に観察の目が養われる。育児になれて、退院してからあわてないですむ。ずっと一緒、ということで、ときには疲れてしまう母親もいたが、それは助産婦のケア次第でフォローできる問題だと思う。

●総合病院助産婦(東京都) 
・退院まで異室。
・同室の必要はない、とスタッフが考えている。病院の構造上、スペースもない。同室でないのはとても残念に思っている。退院してから困るのは母親なのに。この病院でしか働いたことがなく、他の病院のやり方について知ろうとも勉強しようともしない助産婦の意見が通っている。夜間授乳でさえ「母親は疲れているのになぜそんなことをさせるの?」という考え方。だが、改善しようという助産婦もいて、「初乳を早期に飲ませる」など、少しずつではあるが努力している。

総合病院の助産婦(香川県) 
・退院まで異室。
・内科といっしょの混合病棟で、院内感染を避けるため同室にしない。以前、勤務していた病院は同室で、母乳をすすめるにはやはり同室のほうがいいと思う。が、分娩がたいへんだった人は同室だと安静を保つことができない。異室であれば授乳と授乳のあいだはゆっくり眠ることができるという利点もある。また、母親の意識が低く、母乳の何がいいのか知らないし、「授乳やマッサージで起こされるのはイヤ」、「同室はイヤ」という人が多い。夜間授乳3時間おきのときはだれも授乳に来ず、4時間おきにしたらやっと来るようになったという現状。

あかね助産院助産婦(神奈川県) 
・出張自宅分娩専門なので、自宅出産後、ずっと赤ちゃんは母親のそばにいる。
・分娩でぼろぼろに疲れていて世話ができない場合は別だが、生まれた子は母親のそばにいるのがいちばんいいと思う。ほしいときにおっぱいがもらえるし、母親もそばで赤ちゃんを見られるのでとても満足している。産後1〜2日のおっぱいがたくさんでないときは、赤ちゃんにひんぱんにすってもらうことで母乳が出るようになる。母子が一緒にいなければ、おっぱいが張ってきても飲ませられないし、生まれた子を見たいときに見られない。

総合病院の助産婦(新潟県)
・退院まで異室。
・混合病棟で、新生児に感染があってから異室になった。母親は異室・同室を選択できない。以前は1〜4日目まで昼間同室、5日目〜退院まで昼夜同室だった。同室でなければ、赤ちゃんの泣く様子や空腹の様子などを母親が学ぶ時間がないし、母乳を出す点でもマイナスで、とても不自然だと思う。見直さなければ、と動き始めているところ。

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