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THE VOICE !

会陰切開

REBORN第10号(1996年1月発行)より

 できれば「傷のないお産がいい」ほとんどの女性はそう思っているはず。しかし、会陰切開は、多くの病院で初産のほぼ9割に行われています。「自然裂傷よりも縫合しやすい」「誕生を早めて赤ちゃんの負担を軽くする」などがその理由です。
 一方、助産院のように切開ができない施設や方針によって切開率が低い病院では、赤ちゃんに危険が迫った場合などやむを得ない場合をのぞいて会陰が伸びるのを待ちます。それでも、傷や赤ちゃんの状態は決して悪くありません。
 ただ、そこでは医療者も産む方もそれなりの努力をして、お産全体に工夫をこらしています。それを、どの病院でも出来ることではないと判断し、現代の出産に切開はやむを得ない、と結論する人もいます。 リボーン会員は、会陰切開にどんな思いを抱きながら、病産院、助産院で働いたり、出産したりしているのでしょうか。会員番号によって無作為に選ばせていただいた方に突然お電話し、その場で直感的意見をいただきました。

 出産体験者への質問
 ○切開がありましたか。しない場合は、裂傷がありましたか
 ○それをどう感じていますか
 ○切開した場合、事前の説明がありましたか

 医療者への質問
 ○勤務先での会陰切開の状況
 ○それを適切だと感じていますか
 ○適切、あるいは適切でないと感じている理由は何ですか

出産体験者に聞きました

●個人病院で第1子出産 
○切開しなかったが、裂傷が少しあった。
○切開はできるかぎりしたくなかったので、医師と助産婦に事前に話をしてあった。ナ後は「切ってもいいから早く出したい」と思ったが、助産婦さんが「もう少しだから頑張ろう」と励ましてくれたため、切らずに産むことができた。
○医師からの説明はなかったが、こちらから聞いて、切開したくないことを伝えた。そうでなければ、その病院ではほとんどの妊婦が切開されていたようだ。

●総合病院で第1子、助産院で第2子出産
○第1子は切開して吸引分娩、第2子は切開しなかったが軽い裂傷あり。
○第1子のときも医師はかなり待ってくれた。赤ちゃんが大きくて、私自身、疲れてしまっていたので仕方がなかったかなと思っている。第2子の時は、もっと大きい子だったが助産婦さんの介助で少しの傷がついた程度で産むことができた。産後の回復も第1子のときよりずっと早く、満足している。
○第1子のとき、「赤ちゃんが大きいから、ちょっと無理みたいだね。手伝ってあげる」と言われただけで、切開、吸引についての説明はなかった。

●自宅で第1子出産 
○なし、裂傷かすり傷程度
○無事に産めてよかった。切開はなるべくしたくないと思っていた。まずは助産院を探したが、近所でみつからなかった。仕方なく妊娠5カ月まで総合病院へ健診に通っていたが、母親学級で分娩室を見たときに「やはりここでは産みたくない」と思い、夫と2人だけで助産婦も呼ばずに自宅で産むことにした。
○総合病院では、状況に応じて切開すると言っていた。

●産婦人科と小児科がいっしょになった病院で第1子出産 
○会陰切開はしたくないというバースプランを出していたが、産道にいる時間が長くなり(第2期遷延分娩)、赤ちゃんの心音が弱ってきたため、切ることになった。
○希望していた通りのお産にはならなかったが、仕方がなかったと思っている。
○バースプランを出していたので、なぜ切開することになったか説明を受けた。

●個人病院で第1子出産
○切開されたが裂けてしまい、最後の抜糸は1カ月後だった。
○産後の回復に時間がかかり、辛かった。近所に出産施設がほかになかったため、ここで産むしかなかった。とても混んでいた。
○説明はなかったが、初産婦は全員、切開していたようだった。

●助産院で第1子出産(保健婦)
○なし、裂傷があった。
○学生のときに実習で病院でのお産を見たときから、時間(病院の都合)で産ませられるのは嫌だと思っていた。なるべく会陰切開もなく、自然に産めるところを、と助産院を探した。先生との会話で信頼ができていたので、結果としては裂傷があったが、臍帯が首に巻いていたこともあり、やむを得なかったと思っている。

●アメリカのバースセンター(助産院)で第一子を死産し現在妊娠8ヶ月。
○第一子なし、第2子? 
○会陰切開されなかったことは、よかったと思っている。
お産の要望を聞かれたとき「必要があれば構わない」と伝えた。(アメリカでは、助産婦も会陰切開をおこなう)前もってお互いに話し合っていたので、理解が深まったと思う。第2子は日本の産婦人科で出産する予定だが、まだ、細かいことは話し合っていない。いずれ相談することになるだろうが、フレキシブルに考えている。

●総合病院で第一子出産
○あり。裂傷もあり、産道にまで及んだ。
○必ず会陰切開をすると言われていたので、仕方がないと思った。ただ、どんな状況でも必ずする、という病院の方針には疑問が残る。私の場合、陣痛促進剤を使ったあとお産が急激に進み、3800gと赤ちゃんも大きかったことから、ほかにも裂傷ができた。新米の医師が上手に縫合しなかったために分娩2時間後に大量の出血があり、再縫合した。痛みがとても強かった。

個人病院で第1、2子出産
○共になし。裂傷もなし。
○よかったと思う。
○いきなり1分おきの陣痛で始まってどんどん進行し、初産3時間半、ふたり目2時間半、と超がつくほどの安産だった。また、いきんでいるときに「この人、すごく会陰が伸びてる!」と助産婦さんが驚いていた。何か特別なことをしていたわけではないので、これは体質かもしれない。

●病院で第一子を出産
○あり。
○まわりの人も切開したし、雑誌や本にも会陰切開の必要性について書かれていたので、当然切られるものと思い、納得していた。ただ、4日目の抜糸までは歩くのもつらく、産後にこんな痛みがあるとは思わなかった。
○母親学級で会陰切開について話があった。自然な裂傷は傷口がグチャグチャになってしまい治りにくいが、切開すればそうならないし痛みもない、と言われた。

●総合病院で第1、2子、自宅で第3、4子出産(九州医療技術短期大学助手)
○第1、2子あり。第3子なし、軽い裂傷があり、クレンメ(金具)でとめ、一日でついた。第4子なし、まったく無傷。
○学生に自分の経験も含めて、会陰切開がなくても生まれることを強調している。また、卒業後、勤務する病院によりさまざまな方針があるが、それが最良の方法とは限らない、とも言っている。
○第1子出産は11年前で、切開に説明はなかった。当時は「切開しなくては産めない」という考えが根強くあり、必要かどうかという議論さえなかった。

医療者に聞きました


総合病院助産婦
○初産、経産すべて切開している。
○切らなくてもいいのではないかと思うときがたびたびある。
○会陰がよく伸びていて待てば生まれるという場合も「少しでも赤ちゃんの頭に圧迫を加えるのはよくない」という医師の考えで全員が早い時期に切開されている。それもかなり深く切るので産後の回復に時間がかかる。助産婦の意見は全く聞き入れてもらえず、医師がぜんぶ自分でやりたがるので悩んでいる。

●助産婦学校学生 
○実習に行った総合病院では初産婦のほぼ全員に切開していた。個人病院では割合はわからないが実習に入ったときは切開していた。
○適切だと感じない場面もあった。
○切開する時期が早く、深くはさみを入れていたから。

●総合病院と個人病院の助産婦
○総合病院では全員に切開。個人病院では必要に応じて切開している。
○特に何も感じていない。
○切開をするかどうかの判断は医師がしているが、切っても切らなくても妊婦がその処置を肯定できればいいのではないか。切開することがどうであるというより、受ける個人の問題だと思う。また、妊婦さんたちがそれほどこだわっているように思えない。

個人病院経営(産婦人科医の妻)
○バースプランを出してもらい、切開したくない人にはなるべくしないようにしているが、必要なときには分娩台の上で話をし、家族にも了解を得て切ることもある。消費者の希望、医師○助産婦の判断をあわせて切開するかどうか決めている。
○私がどう思うかではなく、消費者の立場にも立ち、相互に歩み寄ることが大切だと考えている。切開してほしいという人もいる。母親教室でも会陰切開の話をしたりビデオを見せたりし、消費者自身に考えてもらっている。

●個人病院助産婦 
○婦長の方針が「待つお産」なので、必要がない限り入れない。会陰切開があるのは10人にひとり程度。
○ほぼ適切。
○会陰切開を頻繁にしてきた以前に比べ、産後の経過も良くなってきていると思う。ただ、障害なく赤ちゃんが生まれるのが一番だと思う。医師は「安産だったからよかったものの...」と、会陰切開を最小限に押さえることには反対のようで、よく議論をする。

個人病院助産婦
 ○初産婦のほぼ全員。
○適切だとは思わない。
○学生の時実習に行った助産院のお産は、ほとんど切らずにすんでいた。今の勤務先では、病院の方針で待つことが出来ない。30分から1時間後に生まれそうなタイミングで分娩室に移動させるが、その時間が過ぎてしまうと「とにかく早くお産を終えなければ」といった雰囲気が現場に漂う。妊婦さんからも「切らないで!」という申し出は、今のところあまりない。

●病院助産婦 
○初産婦は必ず切開する。
○思わない。
○医師は、「早く出そう」という気持ちが強く、会陰切開をしないお産がとてもこわいようだ。ドクターと助産婦のあいだでよく議論しているが、「会陰切開だったら一カ所縫合すればいいものを、変に裂傷すれば縫合が難しいし、医学的にも必要」と言われて押し切られ、折り合いがつかない。

市立病院助産婦(育児休暇中)
○初産はほぼ全員、経産は約半数
○多い。もっと待つべきだと思う。
○私自身、助産院で切開なしに出産し、裂傷もなく3800gの子を出産した。だが勤務先の病院では、もっと待ちたい、と思っても、待つだけの余裕が現場にない。助産婦のあいだにも様々な意見があり、「待つお産」に賛成の人ばかりではな「。職場復帰したら、自分の経験を生かして介助したいと思う。

元・大学病院助産婦 
○初産婦のほぼ全員
 ○あの状態では仕方がなかったと思う。
○ドクターも若い研修医が多い上に、助産婦も若く、経験を積んでいる人が現場にいなかった。また分娩時には、点滴と分娩監視装置がつけられ、いつも10人以上の学生が見に来ている状態だったので、いくらリラックスを...と言っても無理だったと思う。そういう環境を変えない限り会陰切開は避けられない。医療者が会陰切開を避けられない状況を作っているように思えてならない。もっと待つべきだと思う。

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