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「妊娠中と産後の食を考える」
REBORN第27号より

 

 『医食同源』という言葉が示すように「食べもの」と「健康」は密接に関わり合っています。妊娠・出産・子育ては、自分たちの食事を見直すよい機会ですが、様々な食材があふれる今日では、何を、どのように食べたらいいのか、正直迷ってしまいます。しかし、独身の間はコンビニ弁当が当たり前だった人も、離乳食のためにオーガニック野菜の宅配を頼んでみたりなど、人間の本能には「子どもを守ろう」ということが強く組み込まれているのかも知りません。
 私たちの体にとって、何が本当によい食べ物なのか、食に対して専門家はどう関わっているのか。「妊娠・産後」の食にテーマをしぼり聞いてみました。

<構成>きくちさかえ
<文>三宅はつえ/三好菜穂子
<イラスト>宮下真沙美

REBORN本誌掲載時は実名でしたが、インターネットではプライバシーの観点から匿名しました。何卒、ご了承下さい。

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一般の方に聞きました
1.妊娠中の食事についての情報はどこから得ましたか?
2.入院中の食事はどうでしたか?


医療者に聞きました
1.妊娠中の食事指導は、誰がどのように行っていますか?
2.入院中の食事(産褥食)は、どのような基準で出されていますか?

一般の方に聞きました

1.妊娠中の食事についての情報はどこから得ましたか?
2.入院中の食事はどうでしたか?

●子供1人(9歳)の母親 (埼玉)/第1子を総合病院で出産
1.妊娠・出産関連の本やマタニティ雑誌から。初めての健診に行ったときに、医師が「酒・タバコ・麻薬(!)は、やめてください」と、真顔で言ったのがとても印象的。マタニティ雑誌で「卵、牛乳はアレルギーのもとになるので、妊娠後期はとらないほうがいい」とあったので妊娠後期はまったく控えた。大好きなコーヒーも、ミロのコーヒー味で代用。それが一因かはわからないが、子どもにアレルギーはなく、自分ができる範囲のことができてよかったと思っている。
2.和食をベースにした普通の病院食だったが、自分で作らずに済むことがとても幸せに感じ、入院中は4kgも増えてしまった。

●子供1人(1歳2ヵ月)の母親 (兵庫)/第1子を個人産院で出産
1.産院や市が主催する母親学級の助産婦さんから。塩分・カロリーのとりすぎに気をつけ、鉄分・カルシウムをたくさんとるように言われた。「卵・牛乳も気にしなくても大丈夫」と言われたので、妊娠中は牛乳をガブガブ飲んでいたが、最近、子どもに湿疹ができてきたのでアトピーなのか気になっている。
2.普通の病院食だが、入院中に1度、別室のラウンジでレストランのシェフが出張してのフランス料理ディナーがあった。病院食に飽きてきたころだったので気分転換にもなり、とても楽しかった。現在、通っているおっぱいマッサージの助産婦さんからは、卵・牛乳・油分は控えて和食中心の食事にと言われているが、昼食はパンと牛乳で済ますことも多く、なかなか実行するのは難しい。

●子供2人(3歳、1ヵ月,)の母親(東京)/第1子を個人産院、第2子を助産院で出産
1.1人めのときは、保健所の母親学級で話を聞いた程度であまり食生活を考えていなかった。妊娠中、以前は食べないようなスタミナがつくものを食べたくなり、こってりしたおにぎりを買いにコンビニに通ったほどで、体重が20kg近くも増えてしまった。離乳食がはじまり子どものためにオーガニックの宅配をとったり、「自然育児友の会」を知ることで自分の食生活を考え直す思うようになり、意識が全く変わった。
2.1人めの産院は、院長の奥さんが栄養士をしていて和食中心の食事だったが、母子同室であたふたしているうちに下げられてしまい、あまり覚えていない。2人めは助産院だったので食事は質素なものだと思っていたが、スパゲティや魚のムニエルもメニューにあり、ご主人と作る食事は器や盛り付けもお洒落で楽しかった。体にも心にもおいしくて、『体が温まるとはこういうことだったのか!』と実感。家でも『また、あの味が食べたい!』と、自然な感じで真似して作ったりしている。

●子供1人(2ヵ月)の母親 (愛知)/第1子を総合病院で出産
1.友人の助産婦と友人がくれた本『夫婦でいいお産をしよう』から。本には「和食を中心に薄味で」とあったが、もともと和食派なので、妊娠中も普段の食生活とあまり変わらず、太らないように体をよく動かすことを心がけていた。
2.品数が多く定食のような食事。3時のおやつにはホットケーキが出たり、うなぎの蒲焼きがつくお祝い膳のような豪華版もあり、全体的にカロリーが高そうな感じだったが、食事への不満はとくになく、おっぱい指導もきめ細かくしてくれたのでありがたかった。

● 子供2人(2歳、3ヵ月,)の母親(栃木)/第1子個人病院、第2子助産院にて出産
1.第1子の時は妊娠9ヶ月の時に里帰りをしたが、乳業メーカーからの資料をもらったくらいで、どちらの病院でも栄養指導はなかった。第2子の時は37週の出産準備クラスの時に食事の話があり、貧血に気をつけるようにいわれた。
2.個人病院の食事はとてもボリュームがあり、お祝い膳もでた。助産院では魚や野菜中心の和食で、比較的あっさりしていた。

TO

●子供1人(3歳)の母親(鹿児島)/第1子個人病院にて出産
1.妊娠中の母親学級で栄養士と助産婦、両方から話を聞いたが、栄養士は「牛乳を2本は飲みましょう。卵は完全食品です」と勧められたが、助産婦は「妊娠8ヶ月以降は牛乳・卵は控えましょう」と言っていた。アトピーが気になるので、自分でもこれらはとらないように気をつけた。
2.豪華なお祝い膳がでると聞いたので、自分はそういうものはいらないからと外来で医師に告げたが「お産で消耗した体力を回復するためには、栄養の摂取は必須です」と取り合ってもらえなかった。結局病院のご飯は面会に来た夫が食べ、自分の分は家からおにぎりを持ってきてもらって食べた。お祝い膳を食べた同室の人たちは、おっぱいが張りすぎて痛いと言っていた。

●子供3人(9・7・1歳)の母親(茨城)/全て総合病院で出産
1.病院で栄養の話はとくになかった。妊娠後期に体重が増えすぎたとき、医師から注意するようにいわれたが、具体的な指導はなかった。
2.他の人の食事より牛乳が1本多くついていた。全体的に量が少なく、とくに野菜はすくなく、質素な気がした。おやつにはビスケットやパンが出たが、ご飯が質素だったので、お腹が空いてみんな食べた。

●子供2人(4歳、2歳,)の母親(東京都)/第1子、第2子を自宅出産
1.1人目を妊娠する前から玄米食をはじめていた。食について自分なりに考えていたからか、助産婦から特に指導はなかった。第2子の時はつわりで玄米ににおいが鼻についたが「健康のために食べなきゃ」と頑張っていたが、助産婦から「もっと気軽にやってみたら」といわれて、気が楽になった。
2.産後は姑が玄米粥を1週間炊いてくれた。おかずは鯉こくや味噌汁の他は、消化の良いもので、ごく普通のものを心がけた。

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TO

 

医療者に聞きました



1.妊娠中の食事指導は、誰がどのように行っていますか?
2.入院中の食事(産褥食)は、どのような基準で出されていますか?

●勤務助産婦(長崎県)
1.母親学級と外来で助産婦が指導。「和食を中心に」といっても漠然としてしまうので、妊婦さんに「今朝、何を食べましたか?」という話を導入にしてバランスよく食べるように話している。食べ物全体を8とすると、5を穀物、2を野菜・海藻類、1を肉・魚にするよう指導している。
2.経営者でもある産科医と栄養士が決めているので、助産婦の指導とは矛盾する食事内容になりがち。「日母の学会では、産後のカロリーを高くするように言ってきている」と主張する産科医となかなか折り合わず、個人産院なので変えていくのはなかなか難しいと感じている。

● 勤務助産婦(宮城県)
1.看護婦15名に対して助産婦は私一人で、母親学級はすべて看護婦が行っている。前期の母親学級で食事指導があるが、テキストに書かれている30品目をバランスよく取るなど栄養学に基づいた基本的なことをさらっと読む程度なので、妊婦さんにきちんと伝わっているのか疑問。食生活にはかなりの個人差があるので、集団でまとめて指導するよりも、2〜3日内の食事を書き出してもらって外来で個別に話したほうが本人にも伝わりやすいし、貧血、妊娠中毒症の予防にもなると思う。個別が無理でも、いずれ3〜4人の少集団でできればと思っている。
2.栄養士がいるのでカロリー計算に基づき全部産院で調理した食事を出しているので、量、質ともに悪くはないと思う。ただ、3時のおやつに市販の生クリームを使ったものなどを日替わりで出しているのが、サービスからだとは思うが気になっている。

● 勤務助産婦(長崎県)
1.母親学級の前期に助産婦と栄養士による妊娠中の栄養指導がある。30品目をとるように話しても漠然としているので、赤・黄・茶・緑・白など色を取り混ぜてとるようにするとバランスよく食べられると話している。母親学級は5〜6人前後の小集団で、1日の食事を書き出し、必要な人は残ってもらい個別に話す。外来でも、貧血や減塩指導が必要な人は栄養士に個別指導を依頼し、1〜2回の指導で改善が見られない人は医師から指導するようにしている。
2.栄養士が約1800kcalになる献立をたてている。産後直後の人はおなかが空くので、果物やヨーグルトなどが1品余計につく。3食でカロリーも十分なので、おやつは出していない。

●開業助産婦 (兵庫県)
1.現在は母乳専門に活動しているので、授乳中の食事指導で添加物を避け、バランスよく食べるように指導している。授乳中は、3食2膳ずつご飯を食べ、具だくさんの味噌汁をとるように話している。ご飯を食べれば、おかずも必要になるのでバランスよく食べられるが、パン食ではバランスが悪くなってしまう。お母さんが油っぽいものを食べると、おっぱいを飲んだ赤ちゃんに湿疹ができたりするのを見て食事の大切さに気づくお母さんも多い。栄養がすべてではないが、食べものは人間の体、細胞を作る大切なもの。妊娠以前からも、食生活に気をつけてほしいと思う。

●大学病院勤務助産婦(栃木県)
1.妊娠中期に栄養科の栄養士から「妊娠中の栄養」について話してもらう。まず1週間の食事内容を書いてきてもらって話をするので、その人にあった食事指導になっていると思う。
2.妊娠中の体重増加が10kgくらいの人は「褥婦食」で2400kcal。元々の体重がオーバー気味の方や、妊娠中太りすぎた方は「基本食」1800kcalとしている。

●総合病院勤務助産婦(長野県)
1.妊娠中毒症などの異常があるときには栄養士が、とくに問題がなければ、外来勤務の助産婦が妊婦健診のときに個人指導する。母親学級や安産教室でも話している。
2.「産科食」は油類を控えるなどしている。2年前より、産後3日目に「お祝い膳」を出すようにしたが、これも盛りつけに心を配った和食の「お祝い膳」とし、乳房が張りすぎないように、助産婦と栄養士が相談して献立を考えた。

●母乳育児相談室開業(静岡県)
1.15〜6年前勤めていた病院では、妊娠中の保健指導は、医師の診察の後に必ず助産婦がしていた。妊娠中の栄養指導についても、その方に応じて話をしていた。入院中には母乳によい食事の話を、また、退院後の継続看護も家庭訪問で食事の話を、それぞれ助産婦が行っていた。開業して13年になるが、勤務時代に学び得たことは、今の自分の仕事に大きなプラスになっている。
2.産後の食事は2200kcalから2400kcalと少々高めだったが、おやつを低カロリーのものにしたりして工夫した。ときには牛乳などがでてしまい、栄養士折り合いをつけるのは難しいものがあったが、話し合いの中でこれらを改善していった。

● 総合病院勤務助産婦(大阪府)
1.妊娠中の栄養指導は、外来の助産婦が一言話すくらいで、妊娠中毒症などの問題のある方には、栄養士から指導がある。マタニティークラスでも栄養の話は栄養士が担当している。栄養に関する理解というのは、一人一人大きく違うので、妊産婦さんの生活をよく把握している助産婦が行った方が良いのではないかと思うが、栄養の話は奥が深く「あなたがしなさい」といわれると自信がない。
2.産後の食事は一般の普通食でおやつもない。産後だからといって、特別なものは何もない。

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REBORN紙 第27号 (2000年4月発行)に掲載したものです。

 

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