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性教育
性教育、どう考えますか
REBORN第24号より

「援助交際」「若年妊娠」...若い人たちの「性意識」が変わりつつあります。家庭で、学校で、どんな教育がなされた結果なのでしょうか? 「性」を大事にできないのは、自分を大事にできないのと同じことです。私たちが受けた「性教育」、そして現代の性教育事情を通して、広く「生命教育」について考えてみました。  

<文・構成>三宅はつえ/三好菜穂子/熊手麻紀子
<イラスト>宮下真沙美


REBORN本誌掲載時は実名でしたが、インターネットではプライバシーの観点から匿名しました。何卒、ご了承下さい。

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一般の方に聞きました
1.どんな性教育を受けましたか。それに対してどう感じていますか。
2.子どもに対して、家庭の中でどのような性教育をしたいですか。あるいは、していますか。


医療者に聞きました
1.施設、地域で性教育をおこなっていますか。
2.これからの性教育は、誰が、どのように行っていけばいいと思いますか。

 

一般の方に聞きました


●子供2人(4歳,2歳)の母親
1.小学校の4年か5年生の時に女子だけ集められて話を聞いたが授業で性病などの話を聞いた記憶がある。母親が看護婦だったので、性に関してはあけっぴろげに話せる家庭だった。
2.この10年エイズ・ボランティアとして活動を続けている。小学生とパッチワークをつくって、海外のエイズ患者に送ったりしている。この活動を通じ、差別はよくないことを伝えていきたい。


●子供2人(5歳,1歳)の母親
1.小学校で女子だけ集めて初潮教育の映画を見た。そういうものかと特に驚きはなかったが、一人だけショックで泣いた子がいたのを覚えている。
2.下の子を妊娠したときに上の子が出産に興味を持ったので、子供を出産に立ち会わせたかったが、進みがはやくて間に合わなかったのが残念。性の話は子供が聞いてこなければ、特に話さないかもしれない。


●子供1人(4ヶ月)の母親
1.小学校5年生の時、放課後に女子だけ集めて初潮のビデオを見てナプキンの使い方などをおそわった。なんで女子だけ集められたのか不思議だった。
2.子供に性に関することを聞かれたらそのまま答えたいが、聞かれるまではできれば話題にしたくない。一人目は助産院で出産したので、二人目は出産に立ち会わせ、自然に見て覚えてほしい。


●子供1人(3歳)現在妊娠中の母親
1.小学校5年生くらいの時、女子だけ保健室に集められ、生理の話を聞いた。家庭ではあまり性の話はしなかったが、姉がいたので初潮の時など相談した。
2.性に関することは早いうちから自然にふれていきたい。男の子なのでお風呂タイムにおちんちんの洗い方とか話している。


●子供1人(1歳2ヶ月)の母親
1.小学校の時に女子だけ集めて初潮の話を聞いた。特に何ということはなくそんなものかと思った。
2.自分自身、男兄弟がいないので男の子への関わり方がよくわからない。ウソをつかずに子供の疑問に答えていきたいと思う。男の子には男親、女の子には女親が説明するとよいのでは?姉のところも男の子がいるので経験者の意見を参考にしたい。


●子供2人(4歳,1歳)の父親
1.小学校で性教育を受けた記憶はない。中学校になると妊娠・出産の流れの中での性教育があった。性の情報は「平凡」や「明星」の性の特集号をみんなで回し読みしたり、友達同士の口コミで知識を得た。
2.自分達が先輩から遊びの中で伝授されたような情報を、こどもが小学生くらいになったら「どうだ、知ってるか〜?」という感じで伝えていきたい。子供の性の悩みの相談者という存在でありたい。


●子供2人(9歳・3歳)の父親
1.これだ!という性教育を受けた覚えがない。個人的に親しかった先生から教えてもらったことと、本を読んで知識は自分で得た。集団教育はなかったが、性に関してそれほど困った記憶はない。
2.お風呂タイムとかに、男の子に赤ちゃんの話などをしている。小学校の高学年くらいには、もっと具体的な性の話をしようと思う。


●子供1人(1才)の母親 
1.小学校では、男子はサッカー、女子は「生理(初潮とか、女性の性器・子宮について)について」の教室があった。中高では保健体育で少し。家庭ではほとんどなかった。もっと、くわしく、本当のことを早く知りたかった。たとえば、女性の“性”について、SEXについて、妊娠と子どものこと、おっぱい(母乳)のことについて学校だけじゃなく、母親にはもっと話して欲しかった。単純に「男女交際の否定」をされていた時期が長かったように思う。男女別に教育というのもおかしかったと思う。
2.夫婦そろって、こどもに声掛けをしていきたい。こちらから、強制する指導ではなくて、素直な疑問が聞き合える、言い合える関係でいたい。


●子供2人(7才,5才)の母親
1.小学生の時は講堂で話とスライド.後半女子だけ残され、窓に暗幕を張って月経のことを。高校では「生命誕生のビデオ」を見て、避妊・中絶についても一通り話があった。母(Ns)から、小6くらいの時、月経の仕組みと手当てとマナーを教わった。母が年齢に応じて、きちんと隠さず教えてくれたので、今はとてもよかったと思ってる。水泳の授業を休むときも「月経」ではなく「メンス」と英語でかいてくれたのは、とてもうれしかった。
2.母と同じく、包み隠さず、正面から答えている.月経もナプキンも息子は実際に見ている。また、色々な考え方があって、人前で大きい声で話すもんじゃない等のマナーも併せて教えています.「男と女、こんな風に違うねー」と明るくさっぱり、でも正確にこれからも伝えていきたい。

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医療者に聞きました


●開業助産婦(長野)
1.あえて「性教育」というかたちではなく、お産にきた人たちに大人の男として女としての話をしている。
2.私の場合、性教育のとらえ方が他の人とは違うかもしれない。とにかく卵子と精子が好きで、そこから「子宮と地球の法則」が導き出されると思う。お産をきっかけに家庭の中で男と女が性を語るために、助産婦がその橋渡しができるとよい。


●保健婦(長野)
1.小中学校の授業に大学の先生を呼んで話をしてもらうなど、教育委員会などと協力し、行政として関わっている。
2.性教育は家庭と学校の双方でおこなわれるべきだ。親として伝えた方がよいこともあるし、すべてを誰かが行えばよいというものではない。情報は正確に伝えなければならないが、子供たちに何もかも教えなくてもよいのではないか。現実ばかりを伝えると、夢がなくなる気がする。


●病院勤務助産婦(埼玉)
1.7〜8年前から市立小中学校の依頼で出張授業を実施している。「双子はどうやってできるの?」などの疑問や自分の体で悩んでいることを投げかけられることも多く、これからも専門家としてQ&Aで答えていきたい。
2.性教育は学校の先生がきちんと対応できると理想的だと思う。学校には教科教育だけでなく人間教育という観点を重視して欲しい。現在は子供たちに直接教えているが、助産婦としては学校の先生への専門的知識の提供と言う形でサポートして行けたらよいと思う。


●助産院勤務助産婦(東京)
1.出産に立ち会う子供たちに向けて「子供クラス」を実施している。これは「性教育」というより「生命教育」で、『一つ一つの命はすべてが 選ばれた存在で大切なもの』と伝えている。幼児から、時には小中学生も参加するがみんなとても興味を持って見聞きしている。
2.自分でもきちんとした性教育を受けた記憶がない。今の子供たちをとりまく性にまつわる環境は「援助交際」や「若年妊娠」などの問題がたくさんある。助産婦は女性に深く関わる仕事であるので、もっと性教育にも関わっていけると良いと思う。


●病院勤務助産婦(新潟)
1.特に行っていない
・両親が行うのが良いと思うが、性に対するマイナスイメージが大きいのでなかなかきちんとした形で伝えられないと思う。「性は大切なものだ」と良くわかっている『性の専門家』に委ねるのが良いと思う。


●助産婦学生(東京)
1.学生なので、まだ性教育には携わっていない。
2.性教育はいろいろな発達段階で、様々に形を変えて必要なものだ。学校教育の中での性教育は学校側の枠もあり、具体的なことを話せない場合もある。性教育は助産婦など、生徒達と一歩離れた存在の方が恥ずかしさを感じないでいろいろな相談が出来るのではないだろうか。


●出張開業助産婦(東京)
1.3年前より母校の私立高校で「性」についての講義を担当している。今年は16才が対象で、若年妊娠や妊娠中絶など具体的な症例を紹介した。学生は身近な問題として熱心に聞き入っていた。卒業生で助産婦ということもあり、より身近な存在として受け入れられているのではないだろうか。
2.「性教育」というのは、性だけを切り離して論ずることは出来ない。特に高校生くらいになると学校の先生の他にも、単一の専門職でない多くの大人達が関わることで、包括的な性教育が出来ると思う。


●開業助産婦(石川県)
1.特定の年齢を集めての性教育は実施していませんが、助産院での業務の中で、「女性」の性の多様さを、お産前の両親学級の中で、夫も参加した場で説明、指導しています。特に、「産む性」については、親になることと関連させる点で、時間を多くとります。外来では、10代の妊娠について相談されることが、最近増えています。相手にとって(16歳から19歳)では、迷いの中で、男性医師の産婦人科を受診するより先に、助産院のことを良く知らなくても助産婦が女性であることだけで来院している様子です。
2.これは、誰かに託し、任せられれば責任放棄できてよいのでしょうが、最終的に原点に返れば、『親』に帰着するように最近は感じています。ある時期、避妊方法や、妊娠の仕組みなどを、それぞれの専門家が説明することは可能とも考えますが、人の生命の大切さ、生き物の生(性)を知る機会は、それぞれが人として生まれた時から学びが始まっているような気がします。社会の影響を受けながら子供から大人へと成長することでは、漠然と社会にも責任はあるようですが、決して、第一番目の責任者とも言えないようです。若い10代の妊娠相談では、その大半が親より先に他人(この場合助産婦)に相談している点で、何か不安を感じてしまうのは、私だけではないように思います。性教育とは、狭義で捕らえるべきものでなく、広義的視野から、次の世代への橋渡しにかかわる役割があるように感じる今日この頃です。


●フリー助産婦(東京)
1.保健所の母親学級のとき「産後の性生活」という感じで約10〜15分ぐらい。
2.医学的なこと、具体的な避妊の方法指導はある程度の専門知識と指導のテクニックを訓練することが必要だと思う。助産婦は家族計画実施指導員の免許をもっているので適任だと思う。ただ、今の時代はテクニックだけではなくもっと精神的なこと生命の大切さ、自分の身体を大切に思う気持ちを持てるような性教育が必要ではないか。だとすると、もっといろんな人が性教育に関われると思う。例えば・・・子育て中のお父さん、お母さんがどんな気持ちで妊娠、出産に至ったのか、から始まって子育ての苦労などを通じて自分たちがどれだけ大切に育てられたかということを知るのも性教育の一つかも。熟年夫婦に年齢や環境によって変化してゆくSEXのこと、それ以外でのコミュニケーションをどうやっきたか・・・とか。ひとりひとの性の価値観をいつでもだれでも語れる、そういう環境がないことが一番の問題なのかもしれない。 

REBORN紙 第24号 (1999年7月発行)に掲載したものです。

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