変わった?変わっていない?/粉ミルクメーカーと産院の関係
REBORN第15号(1997年4月)より 文/三好菜穂子 産院で出産すると、入院中に粉ミルクメーカーから派遣された栄養士の「調乳指導」なる時間があり、退院時には粉ミルクの缶や哺乳瓶、パンフレットなど山のような「おみやげ」をごっそりもらって帰る場合が少なくない。産院もメーカーもこぞって「母乳
が一番!」と言いながら、母乳育児を順調にスタートしていくために最も大切な産後1 週間前後(すなわち入院中)に、熱心な粉ミルクのPR作戦が、産院を舞台に展開されて
いるのが現状だ。 粉ミルクは、大きな理由がない限り、初めて使ったメーカーから他メーカーに切り替える購入者が、極めて少ない商品と言われている。また「出産した産院が勧めるもので
あれば、いい商品だろう」と安心感を持つ産婦も少なくない。 産院での営業は、派遣する栄養士の人件費が膨大な金額になるにもかかわらず、ミルクメーカー側にはかなりメ
リットのある活動のようだ。最近では、「一人っ子」政策とはいえ、日本より広大なマ ーケットを持つ中国に進出し、産院に栄養士を派遣する、この営業スタイルをすで
に始めているメーカーもあるという。 その反面、母乳育児を希望する母親が増えてきていることに対応して、母乳外来を設けたり、母子同室にするなど、母乳に熱心な産院が増えてきているのも事実。
この流れを受けてか、産院での営業活動を全面的にやめ、営業経費分を粉ミルクの値下げにあて、消費者に利益還元をはかるメーカーも出てきている。 初乳の重要性が広く認識されたことで、新生児期には、「母乳だけ」の母親が「粉ミルクと混合」の母親を上回っているが、生後3ヵ月になると、逆転する(厚生省調べ)。月齢が上がるにつれ、「混合」の割合が増えることを受けて、いまやフォローアップミルクの分野で、粉ミルクメーカーの熱い商戦が繰り広げられている。
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