「高齢出産は危ない」と一般的に言われているけれど、最終結果は悪くない、というデータもある。1990年、ニューヨークのマウント・サイナイ医学校のBercowitzが病院で出産した20歳以上の初産婦(単胎)3910名を対象に調べたところ、35歳以上と20〜29歳が最終的に見せた差は、低体重児(low-birth-weight
infant)の割合がわずかに上昇したのみだった。
30〜34歳、35歳以上いずれのグループも、早産が増える、週数の割に小さい子(small for gestational age)、低アプガー・スコア、周産期死亡が増えるということはなかった。ただし、帝王切開と赤ちゃんがNICUに入院する率は高かった。だから道中は違ったが、結果的にはほぼ同じように安全だったことになる。
カルフォルニア大学病院で出産した初産婦を35歳以上の人857人、20〜29歳の1597人と比較したものでも、胎児仮死、前置胎盤、多胎、陣痛の異常は増え、帝王切開は2倍になったものの、臍帯血ガス、5分後のアプガー・スコアに差はなかった。
東京でも、高齢出産が多い愛育病院が出産と年齢の関連を調べ、帝王切開、妊娠中毒症、分娩遷延などに差があったものの、全体としては、管理が十分な限り高齢出産の安全性は「飛躍的に上昇したというべき」と結論した。
高齢、特に初産の場合には膨大なリスクが数え上げられてきたが、このように、調べてみると従来言われてきたことに差が出ないこともある。これは、問題があっても早めに手を打てる技術が進んできたからだろう、と言われる。
帝王切開率の差も、そっくりそのままお産の危険度を表してはいないだろう。不妊症治療で授かった赤ちゃんが高齢初産には多いこと(多胎が増える、「貴重児」なので大きな理由がなくても帝王切開にすることがある)、「高齢だから」と用心深くなる、ということもある。
日本全体の周産期死亡率を見ると、20〜34歳では千対5.0〜5.7と横這いだが35〜39歳では7.9に上がる。これを見るとお産の結果も違うことになる。だが、この上昇は1000人にふたり=0.2%の上昇ということ。ひとつの病院では差が出てきにくいほど小さな差だ。年間500件のお産がある病院だとしたら、35歳以上の妊婦を1000人扱うには20年くらいかかる。
高齢だと母乳の出が悪くなる、とも言われるが、年齢より、授乳回数など、やり方の方がずっと大きな影響を持っているのではないか。
初産の人が少なかったとはいえ、35歳は、子沢山の時代には、まだまだ普通に産み続けていた年齢。自信を持っていいと思う。
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『REBORN』28号(2000年7月発行)に掲載したものです。
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