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高齢出産
高齢出産を考える
REBORN第28号より


どんどん増えている高齢出産。特に初産の場合は不安材料が多くて憂鬱になる人も多いけれど、妊娠したということはお産もOKだからに違いない。育児では、体力はなくても、子どもを受けとめていく力が高齢の母親にはあるという。30代は30代の、40代は40代のマタニティー・スタイルを作りだして、プラス指向でいきたい。

<文・構成> 三好菜穂子/三宅はつえ/河合 蘭
<イラスト>宮下真沙美

REBORN本誌掲載時は実名でしたが、インターネットではプライバシーの観点から匿名しました。何卒、ご了承下さい。

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一般の方に聞きました
1.出産した年齢・高齢出産になった理由は?
2.妊娠中に気をつけたことは何ですか?
3.高齢出産をしてみて、今の気持ちを聞かせてください。


医療者に聞きました
1.貴方の産院に、高齢出産はどれくらいの割合でいますか?
2.どんな指導をしていらっしゃいますか?
3.実際の出産はどうですか?

 

一般の方に聞きました

1.出産した年齢・高齢出産になった理由は?
2.妊娠中に気をつけたことは何ですか?
3.高齢出産をしてみて、今の気持ちを聞かせてください。


子供3人(16歳、9歳、2歳)の母親(東京)、第1・2子を総合病院、第3子を個人産院で出産
1.第3子38歳。計画的でなく自然の流れ。偶然にも7年起きに出産。
2.第1・2子の時は情報が少なかったが、第3子のときににはたくさんの情報を得る機会に恵まれた。第3子懐妊時から自分の体をコントロールする方法として整体に通い、効果があったので現在まで定期的に通っている。食事は天然のものに切り替え、特に塩、味噌、醤油には気を使った。お灸・ヨーガにもトライ。肉体的なことにとどまらず、アロマテラピーやイメジェリー、母乳育児の講演会とお産、育児の情報は聞いて損はないとばかりによく出歩いていた。
3.いろいろなことに気を使ったせいか、3度目のお産がとてもいいお産となり、母子同室の意義も味わえた。子育てで、ひとつ辛いのは、体力のなさで徹夜ができなくなった。子どもが寝付いた後に、仕事しようと思っても目が開けていられないのがツライ。

子供1人(3ヶ月)の母親(栃木)、個人産院で出産
1.36歳。何となく仕事を辞める決断ができなかったため。35歳を過ぎて、さすがに高齢出産のリスク(子どもへの影響)を考えて決断。
2.出産に関する本には高齢出産がリスクの高い出産と扱われているので、妊娠初期は自意識過剰な部分もあった。が、実際には、妊娠期間中、産院で年齢のことを言及されることや高齢出産ということでの指導が全く無かったので、あまり特別なことではないと思うようになった。
3.20代は自分のことで忙しく、自分を犠牲にすることなどできなかったと思う。人によると思うが、私自身は制限された時間の中での育児はストレスになっていたと思う。仕事にとりあえずの見切りをつけた今がベストのタイミングだったと実感している。体力的には確かにきつい面があるかもしれない。同年齢で出産した友人は、訪問の助産婦さんに「母乳の出が悪いのは、年齢のせいかしら?」と言われた。私もそれほど出ていないので妙に納得したが、実際のところはどうなのでしょう?

子供1人の母親(東京)、個人産院で出産
1.35歳。特に深い理由もなく、結婚して、そろそろ産んでみようかと思っただけ。
2.食事。それまでの生活が、極めて不摂生だったので。1日3食、標準的な時間に食べるようにした。
3.自分の年齢や高齢出産だからということを、他人が思うほど、考えたことはない。確かに、体力的には辛いかもしれないが、個人差もあると思うし、体力のある時に出産・育児するという経験をしたわけではないので比べられない。

子供1人(5歳)の母親(東京)、自宅出産
1.37歳。結婚して10年目で授かった。夫とふたりの生活に十分満足していて、特に子どもが欲しかったわけでもいらなかったわけでもないのだが、「もう、子どもはできないだろうな」と漠然と思っていたときの妊娠でとても驚き、嬉しかった。
2.とにかく体をよく動かすように気をつけていた。マタニティー・ヨーガは自分の身体にすこしずつ自信が持てるようになり、とてもよかった。
3.特に自分では高齢出産という意識はなかったが、一番リラックスできる自宅で納得のいくお産ができ、「やった!!」という達成感が強くあった。出産、育児を通して新たな世界を見て、新たな友達もでき「産んでよかった」とつくづく思う。頭も身体も若返っていけたら素敵だと思う。

子供1人(8歳)の母親(東京)、都立病院で出産
1.36歳。仕事が充実していたので、中断する踏ん切りがつかなかった。「もうリミットかな」というのが本音。今考えたら、リミットはもっと先でもOKだったかも。
2.高齢とは関係なく、食べ物や薬など直接体に入るものに気をつけた程度。高齢出産での注意点を医師に相談したところ、何でそんなことを心配するのかと、かえって不思議がられた。「染色体の検査など心配な人は別に高齢でなくても心配なのだし」と言われ納得した。
3.育児は体力の面で大変かもしれないが、産褥シッターなどいろいろな方法で乗り切ることもできる。精神面では、自分自身の子育てを客観視できる余裕がある。寿命が延びて長い人生を考えると、無理に出産をあせる必要はないのでは? 周りに流されず、自分のいいと思った方法を選択することが大事だと思う。娘が通う小学校には同世代のお母さんも結構いるし、また10歳以上若いお母さんと話ができるのも楽しい。

子供2人(4歳、1歳7ヶ月)の母親(茨城)、第1子を助産院、第2子自宅出産
1.第1子35歳、第2子38歳。結婚が遅くて、子どものいない二人だけの生活を送りたかったから。産むとしたら、1人目の妊娠が35歳が限界かなと思って。
2.食事は和食中心に、体重増加防止のためにマタニティースイミングをした。
3. お産はどっちも楽だったが、育てるには体力勝負のところがあるので、若い方が楽だったかなとも思う。

子供3人(10歳、3ヶ月・双子)の母親(埼玉)、第1子を総合病院、第2・3子を大学病院で出産
1.第2・3子が双子で38歳。流産もしているので、もう1度妊娠するなら年齢がぎりぎりだと思った。フルタイムで仕事をしていたので、育児休暇を取りたかったという気持ちもある。
2.妊娠初期はとくになかったが、高齢出産のうえ双子だったので、産休に入る前から体がついて行かず、運動はおろか掃除すらできなかった。5ヶ月くらいから足のむくみもひどかったので、食事は塩分を控え、カロリー制限をした。
3. 夜泣きなど体力的にはツライところもあるが、「こんなものかなぁ」という感じ。むしろ第1子のときのほうが、どうなるかも全くわからない初めてに育児に戸惑い精神的にしんどかった。1人目は母乳に布オムツ、離乳食もオール手作りとがんばっていたが、今回は双子ということもあり、紙オムツや粉ミルクなども利用しているので気持ちが楽になった。

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医療者に聞きました

1.貴方の産院に、高齢出産の方はどれくらいの割合でいますか?
2.どんな指導をしていらっしゃいますか?
3.実際の出産はどうですか?

●個人産院勤務助産婦(北海道)
1.7〜10%くらい
2.初産婦に対しては、「す」の状態になれることが安産の決めてという話を繰り返す。経産婦に対しては一般的なことのみ。
3.経過が長い方が多い気がする。早い時期から入院を希望したり、気持ちが入り込みすぎたり、ある程度自分自身が予測していたことと自体が少し違ってくるとパニックになってしまう方も。でも自分自身の力でそれを克服されると、見事に落ち着いて素敵なお産をされる方が多いように思う。

●総合病院勤務助産婦(東京)
1.約1割。
2.外来と病棟は別セクションなので、病棟の助産婦は外来の指導にはタッチできない。マタニティー・クラスは病棟管轄だが集団指導なので、特に高齢出産の方を意識した指導ではない。
3若い方より体力がないせいか、分娩経過に時間のかかる方が多いような気がする。特にキャリアを積んだ方は(看護職とか教師とか)訴えも多く、お産が大変。

●助産院勤務助産婦(青森)
1.高齢出産は112人中7名。全体の6.3%。(うち、初産1名、1経産0名、2経産3名、2名、6経産1名。)
2.一般的に合併症、後期出血や先天異常(情報提供はしてもいいと思う)が多くなると言われていますが、特にしていない。
3.人数が少ないので何とも言えないのだが、初産の方は、所要時間18時間で出血量が800mlだった。2経産の方は、3名とも普通に経過し出産(6〜9時間)、出血量も中等量。3経産は1人は微弱陣痛、もう1人は出血が多量で500ml(胎盤が出るまでに7時間)。6経産は出血が多量。という結果だった。疲労度は個人差があり、一概に高齢だから疲労度が高いとは言えないと思う。時間がかかったのに、疲労をあまり感じていない方もいた。高齢に限らず、経産婦さんは出産の回数を重ねる毎に体がきつくなっているのを実感しているようだ。

●個人産院産科医・男性(東京)
1.約1割。
2.リスクとして先天異常の話をする。希望される方にはトリプルマーカーなどの検査をすることもあるが、積極的には勧めていない。
3.体力のある方はいいのだが、お産であまり体力を消耗しそうだったり、産痛が辛すぎてお産へのイメージが悪くなりそうなときには「無痛分娩」を勧めており、好評を得ている。

●助産院開業助産婦(石川)
1.過去3年間のデータでは、年間分娩数に比して5%、10%、16%と増加し、今年度は上半期で31%となった。
2.医学的な高齢出産についての合併症などは特に強く説明していないが、助産院での安全な自然分娩に臨むために、どの妊婦産にとっても必要と思われる一般的な体重管理・貧血予防など、日常に合わせた指導に注意している。特に経産婦さんには、家族にとっての命の誕生をスムーズに受け入れられるよう、兄弟同伴の診断を常としている。また、異常の早期発見と予防のため、定期的な妊婦健診を勧めている。
3.高齢が理由となるような分娩異常は、記録からもほとんど見受けられない。身体的な面では、初産婦の場合も他の年齢者と大差なく、経産婦では、前回の分娩から数年あいても身体的な適応はスムーズなようだ。精神的な面では、分娩、子育ての双方にも少し余裕があるようにも感じられる。

●個人産院勤務助産婦(神奈川)
1.去年のデータでは、8%。
2.外来で個人指導を重点的に行う。当院ではマタニティービクスを取り入れているので、特に高齢出産の方はクラスを受講することをお勧めしている。
3.実際の年齢よりも体力年齢の方が、お産のときには影響する。最近は若い方の方が体力が無く、すぐに「耐えられないからお腹を切ってください」という方が多く見受けられる。

●総合病院勤務助産婦(大分)
1.データを出していないので正確ではないが、だいたい1〜2割。
2.若い方に比べて、貧血防止の食事指導や1日30分のウォーキングなど体力作りを重点的に行っている。
3.高齢出産でも、妊娠中とお産はあまり問題なく経過する方が多い。ただ、出産直後から母子同室を勧めているのだが、高齢出産の方は産後になると疲れが出て「赤ちゃんを預かってください」といわれることが多いようだ。

●個人産院産科医・女性(愛知)
1.35歳以上は月に2〜3件(30件/月)
2.妊娠中毒症の予防のために、体重管理は厳しくしている。
3.マイペースな方が多く、自分はいいお産をすると信じている人が多い。最初の1ヶ月は体力的な問題からへとへとになるが、児の体重増加などに神経質になることもなく、半年もするといい親子関係ができあがる。その人のペースを乱さないように見守ると、うまくいくようだ。


REBORN紙 第28号 (2000年7月発行) に掲載したものです。

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