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フリースタイル出産
「お産の体位」
REBORN第13号(1996.10)より


 

 お産といえば、ほとんどの産院では分娩台に乗って仰向けの体位をとります。でも実はこの姿勢は重力に逆らっていて、血流が悪くなり、痛みも強いといわれます。幸い最近は、病院の分娩室にも畳やマットが出現し、フリースタイル出産を始めるところも出てきました。 体位が自由だと心も自由。まだまだこれからの体位革命ですが、大いに期待したいところです。REBORN本誌掲載時はすべて実名でしたが、インターネットではプライバシーの観点から匿名にしました。

<構成>河合 蘭   <文>小栗久実子/三好菜穂子  <イラスト>宮下真沙美

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質問

出産体験者の方に聞きました
1.陣痛の間からお産の瞬間まで、どんな体位をとっていましたか?
2.どこまで体位の自由がありましたか?
3.それをどう感じていましたか?


医療者に聞きました
1.どんな体位で介助していますか?
2.それをどう感じていますか?

出産体験者の方に聞きました

1.陣痛の間からお産の瞬間まで、どんな体位をとっていましたか?
2.どこまで体位の自由がありましたか?
3.それをどう感じていましたか?

●第1子を産婦人科医院で出産(愛知県)
1.ほとんど寝ていたが、お産の進みを早くしたいなら歩き回った方がいい、と言われ、歩いたらすぐに破水。陣痛室では、分娩監視装置をつかられていたためトイレ以外は、ずっと仰向けに寝たままだった。
2.分娩台に固定されていたため、まったく自由はなかった。
3.初めての妊娠・出産で勉強不足だったため、医師の言いなりになっていた。現在第2子を妊娠中(5ヶ月)で、出産する予定の産婦人科医院は、フリースタイルの分娩も可能なのでトライしたいと思う。

●第1子、第2子ともに大学病院で出産(大阪府)
1.妊娠する前に子宮筋腫の手術を受けていたため、二人とも帝王切開での出産だった。
2.全くなかった。
3.計画出産なので陣痛の経験が無く、普通分娩してみたかったという思いもある。が、出産当時は、お腹の赤ちゃんのことを考えると「無事に産みたい」と言う気持ちが強かった。

●第1子を産婦人科病院で7月に出産(神奈川)
1.陣痛が始まってからも自宅にぎりぎりまでいたため、布団の中で横になったり、座ったりと自分が楽な姿勢をとっていた。病院に着いたときには、すでに全開に近い状態だったため、すぐに分娩台に上がったが、点滴などをしている間は、足も固定しない状態だったので、体を横に向けるくらいの自由はあった。発露後は、足を固定してそのまま分娩。
2.ほとんど無し。
3.私自身は、その姿勢はそんなに辛くなかった。特に不満はない。

●第1子を妊娠中(東京都)
1.5ヶ月なので、まだあまり実感がわかないが、産むときは自分がどういう体位で産むのが楽なのか感覚的に分かるのではないかと思う。その感覚を大事にしたいので、ある程度「こういうふうにしたい」という希望を聞いてくれる病院を選びたいと思う。助産院も考えたが、初めてのお産なので、周囲の心配もあり、病院で出産しようと思っている。

● 第1子を産婦人科医院、第2子助産院で出産(神奈川)
1.第1子のときは、陣痛室でずっと寝たままで、体の自由は横に向けたくらい。第2子のときは、助産院に向かう車の中で、後部座席のシートの下に座り、シートに上半身を預けもたれかかる姿勢が楽だった。助産院について3分で出産、仰向けで出産。
2.「どんな体位でもいい」と言われたら、仰向けになる人はいないと思う。車のシートにもたれかかっていたときは、1回1回の陣痛の波が来るたび、赤ちゃんが降りてきているのが実感できた。

●第1子を病院で出産、第2子を自宅出産、助産婦(千葉県)
1.第1子のときは、破水しないようにとにかくベットに寝てじっとしていた。第2子のときはだいたい椅子に座っていて、耐えられなくなると、立ったりしゃがみ込んだり、椅子にしがみついたりしていた。産むときは仰臥位だった。
2.第1子のときはほとんど無く、第2子のときはずっと自由だった。
3.第1子のときは仰臥位で苦しく、いきみにくく、不自然さを感じ疑問をもった。そのため第2子は自宅出産にした。自由にしていると、赤ちゃんがいつごろ生まれるかもよく分かったし、余裕があった。リラックスして産めた。

●総合病院で第1子出産、産婦人科医院で第2子出産(岐阜県)
1.第1子のときは、病室にひとりで陣痛をのがしていたため、歩き回ったり、横になったりして自由に過ごし、耐えられなくなってナースコールを押したときにはもう、赤ちゃんが出かかっていた。第2子のときは微弱陣痛だったので、助産婦さんからすすめられて動いていた。妊娠中から好きな体位で産んでいいと言われていたが不安があり、分娩台を少し起こした状態で出産した。
3.第1子のときに何も分からないままお産が進み、第2子の出産まで不安が残ったが、今3人目を妊娠中なので、今度は是非、自分で赤ちゃんを取り上げられるような体位で出産したい。

●第1子、第2子とも助産院で出産(神奈川県)
1.第1子のときは、破水したので、横向きになっていた。第2子のときはベットであぐらをかいたり、四つん這いになったり、辛くなると歩いたり。産むときは仰臥位だった。
2.第1子、第2子とも好きなように動けた。生まれそうになると「仰向けになって」という指示があった。
3.自分の体がいま、どんな状態かがよく感じられて良かった。頭が出た後、肩がなかなか出にくかったので仰向けは出にくいな、と思った。産む直前まで四つん這いになっていたので、そのまま産みたかった。

●第1子、第2子とも助産院で出産(茨城県)
1.第1子のときは、陣痛が夜中に始まり、朝まで自宅で過ごしたが、布団に寄りかかったり、うずくまったり、クッションを背中に当ててもたれ掛かったりしていた。助産院に着くと、しゃがんで台にもたれ掛かったり、お腹をさすってもらうと気持ちよかった。クッションにもたれ、立て膝で産んだ。第2子のときは早めに助産院に行き、ロッキングチェアーのような椅子にすわって腰をさすってもらっていた。分娩時は側臥位。
2.全て自由。
3.排便するような感覚で産んだので、仰向けだったら、大変だろうな、と思う。お腹が痛いときにお腹をかばって自然に体をまるめるような姿勢をとるが、お産も同じで、自然に体が、要求するように過ごせるのがよいと思う。

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医療者に聞きました
1.どんな体位で介助していますか?
2.それをどう感じていますか?

●産婦人科医院助産婦(大阪府)
1.その人にあったよい体位を、産婦と模索しながら分娩に臨む。和室、洋室、LDRを用意しているが、分娩台の場合も足をかけないで使用している。
2.確かに会陰を保護しようとすると分娩台の方が介助しやすいが、産婦にとっては自由に産むことが一番自然だと思う。

● 元総合病院助産婦(静岡県)
1.陣痛中、陣痛室では、点滴や分娩監視装置をつけていたので、座るか寝るかどちらかの状態だった。妊娠期間中、ヨーガクラスを受講していた人は、座位の姿勢をとったりもしていた。分娩は、抑臥位。
2.モニターは自由に動けないので不便だと思った。ヨーガをした人からは、「呼吸法で陣痛をのがしやすかった」 「股関節が柔らかくなってよかった」などと感想を聞いた。抑臥位は、自分の出産で経験したが、いきみにくいと思った。

● 総合病院助産婦(東京都)
1.陣痛室では好きなように過ごしてもらっているが、なるべく動かないように指導。分娩は全員抑臥位で。
2.陣痛室については、動くようにすすめていたが、疲労した人や、真夜中に眠れない人などは疲れて大変だと思った。分娩台の 抑臥位については、介助側は確かにしやすいが、長くかかる人はつらいと思う。「こうしたら」と思っても、体制が変わりにくいところ。いろいろな制約のあるなかで、自分の出来る範囲で動いているが。

● 大学助産学教授(東京都)
1.ここ10年ほどは産婦の望むフリースタイル出産で介助している。水中出産はないが、プールに下半身だけつかっての温浴で陣痛をのがす方法は取り入れている。
2.全て自然にはならないが、精神的心理的な無痛分娩を目指し、産婦を中心にした方法で介助している。助産婦は常に世界の新しい情報に目を向け、研究し、前向きに取り組んでいる。

●公立総合病院助産婦(奈良県)
1.平成3年から、フリースタイルの分娩介助を行っている。側臥位や四つん這いのお産が多い。
2.重力を利用しているため、排臨・発露が早く、助産婦も産婦さんも、お互いお産が楽しくなったように思う。それ以前は、「産ませてもらってありがとう」といった感想を産婦さんから聞いたが、最近は「よかったぁ!」 という感想に変わり、主体的なお産が出来るようになったと思う。

●病院勤務助産婦で現在、育児休暇中(新潟県)
1.すべて仰臥位。年配の助産婦のなかには側臥位でとりあげた経験をもつ人もいる。陣痛に間は、妊婦さんが楽な体位になるよう工夫はしているが、自分から「こうしてほしい」と希望する人はあまりいない。
2.自分自身二人の子どもを勤務する病院で出産し、第1子の会陰切開も当たり前の出産に疑問をもった。第2子は婦長からの承諾も得て、座産したところ、腰がとても楽だった。腰を痛がる産婦さんには是非やってあげたい。

●元大学病院助産婦(岩手県)
1.勤務先が大学病院だったため、ハイリスクの人が多く、病院の方針としては、抑臥位が基本だった。8年ほど前に、上体が起こせる分娩台を導入し、本人の希望により、挫位出産もあった。
2.今は情報が氾濫しているため「アクティブバース」なども、妊婦さん自身が本当に理解しているのかは疑問。産む側がしっかり勉強していないと、何かあった場合に対応できずパニックになる危険も否定できない。産む前から、夫も一緒になって介助する人としっかりコンタクトをとっていくことが必要だと思う。

● 開業助産婦(神奈川県)
1.以前勤務していた病院では、ほとんど仰臥位。分娩台も古いタイプのものだったため、上体を起こすことも出来なかった。
2.私自身は「動いた方がいいのに」と思っていたが、助産婦のなかにも「何かあったらいけない」という意識が強かった。

● 開業助産婦(埼玉県)
1.産婦の希望によるフリースタイルでの分娩介助。
2.「好きな姿勢で」と言っても、病院での出産のイメージが強いせいか、自分から横になる産婦さんが多い。体位については、事前にいろいろと選べることを話しているが、産む人が選ぶことなので強制はしていない。逆に、いろいろ試してみたいという積極的な人もいる。

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REBORN紙 第13号 (1996年10月発行)に掲載したものです。

 

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