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母子同室

フレキシブルな母子同室
・・・同室のための同室にならないように・・・
 川井由美子さん (日本赤十字医療センター褥棟助産婦)

REBORN第12号より


●赤ちゃんの哺乳量はほとんど測らない

 私の勤務する病院では以前は2日目の午後から同室でしたが、1993年に出産直後からの母子同室を始めました。こうなってから強く感じるのは、おっぱいの飲み方が早くから上手になる赤ちゃんが多いことです。入院中はほとんど哺乳量を測らないのですが、退院時には生まれたときの体重に戻っている子が増えました。

 母乳の状態は、おっぱいや赤ちゃんをちゃんと観察できればよくわかります。新生児室でおむつをたくさん替えたり糖水を飲ませたりしなくてもいいので、観察に必要な時間ができたように思います。
 以前よりお母さんのところへ頻繁にいって、お話もたくさんできるようになりました。

●放任にも過保護にもならないように

 しかし完全母子同室ということは、産後間もないのに夜中に泣いて起こされるわけですから、楽なことではありません。疲れがひどく本人が希望するときはいつでも赤ちゃんをお預かりします。
 同室にさえすれば、母乳も親子関係もすべてOK、ということはありません。なかなか母乳が湧いてこない人もいるし、お産が大変だとどうしてもストレスが大きくて大変です。
 同室のための同室ではなく、お母さんと赤ちゃんのための同室であるべきで、そのためにはそれぞれの条件にあったやり方ですすめなければなりません。

 助産婦が手を出し過ぎても、お母さんが自分でがんばったり工夫したりするチャンスを奪ってしまいます。孤独にはしないで、呼ばれればいつでも行く・・・そうしながら、適切な距離をとることが大切だと思います。その適切な距離とは、人によって違うのです。

 お母さんの意志も、やはり尊重しなければなりません。母乳でやろうとは思わない方もいます。ただ実際のところ、ほとんどのお母さんは自分の意志を作っている最中なんですね。だから助産婦が「この人は母乳でやりたくない」と早々に決め込むのも良くないのです。

 数は少ないのですが、病気のために授乳できない人、帝王切開した人など、未解決なテーマはまだたくさんありますが、これから取り組んでいきます。家庭訪問もぜひ始めたいですね。


文/河合 蘭 

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『REBORN』12号(1996年7月発行)に掲載したものです。

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