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本を書き終わったあとは 2013/03/01

「自分を研究して自分がいちばん大切に思っていること、辛いと思っていること、嬉しいと思っていることを書く」

この言葉は、最近また見始めたツイッターで出会った井上ひさしさんの言葉(井上ひさしさんが天国からツイートしているのではないですよ〜「bot」と言って、著名人の言葉を少しずつ配信する仕組みがあるのです)。これが、今の私にはとても響いています。

これこそ物を書く人間がいい物を書くためのとても大切なコツだなあ・・・と思いました。そして、ひとつの不思議さが、心に浮かび上がってきました。それは、今回私が書いた本は晩産の本だったということです。それなのに、なぜ、26歳で母親になった自分が、このテーマを「自分がいちばん大切に思っていること、辛いと思っていること、嬉しいと思っていること」と感じて書いていたのだろうか。それが、とても不思議なのですが、今の自分には、産みたくても産めない人がたくさんいるという事実は確かに自分の大切な,つらいと思っていることに違いないのでした。

本を何冊か書いてきて、自分の本が書き上がる時のプロセスがわかってきています。分娩も何人か出産した人は自分の陣痛のパターンがわかってきますが、それとまったく同じことです。

私は書き始めは気負いがあって、あれも、これも書きたくて、やがてその山に埋もれる時期がきます・・・このあたりがとてもきつい。しかし、それでは、編集者さんが会社で困るだろうと考え(正しくは、自分のためにそう考え)、我慢し続け、最悪なものを書き綴り続けていると、ある日、ふと雪解けのように楽になる日が来るのです。

そこが、素材と、自分の中にもともとあった「自分がいちばん大切に思っていること、辛いと思っていること、嬉しいと思っていること」の融解点なのでしょう。それは、ただの化学反応なので何がどのように融解したのかも肉眼では見えないけれど、そのあとは、もう大丈夫になります。あぁ、この本は書ける、と思えて、推敲の段階が深まるほどにいくらでものめり込み、「あら、もう?」という感じで期限がやってきておしまいになります。

取材させていただい方たちの人生がしっかりと自分事になったとき、本当に書くということができるようになります。そこからは、私のような取材をして話を書くことが中心のジャンルでも、どこか小説と同じように、寝ても覚めても登場人物たちと暮らし、喜びや悲しみを共に感じながら書くことになります。

私は文筆業でありながら、普段は、特にたくさん文章を書くわけではありません。こうして日記もろくに書かないですし、どこからどう見ても筆まめとは言えません。

それでも、本を書き終わる時は、普段とはまったく違っています。そして、そんな時は他の人が書いた文章が、また面白くてしかたがないのです。深みのある文章が持つ、剥いても、剥いても、まだ現れる新たな織り模様を大量に感じたい。そこにある人の心の喜びや悲しさや寂しさを、とてもいとしいと思えるのです。

・・・と、まあこんな調子で、本が手から離れ、見本刷りができるまでの時間を過ごしているのでした。タイトルは『卵子老化の真実』となりました。


暮れゆく「卵子の老化」の年 2012/11/27

紅葉も北風に散らされるようになり、いよいよ今年もおしまいムードです。今年はこちらの日記を本当に書いていなくて、時々見に来て下さってきた方たちには申し訳ないことをしてしまいました。それでも,今日こうして久々にこちらに来ると、フェイスブックやツイッターの画面とはまったく違う白い、白い余白に、紙に鉛筆を持って向かっているようなホッとするものがあります。もう、こんなブログはかなり貴重になってきているのではないでしょうか。

紅葉を見ていると、ちょうど一年前のこんな頃、名古屋に顕微授精の第一人者である浅田義正医師を訪ねたことを思い出します。その訪問はその後、当時、これから卵子の老化についてシリーズ報道をやっていきたいんだと言っていたNHKディレクターさんも同席してくださった4時間にも及ぶ大変熱い取材につながりました。そこで、ようやくつかめた確かな手応えをにぎりしめて、何とか新書を書き上げました。ようやく、その新書も来年の3月刊が正式に決定しました。

この1年は、NHKの卵子の老化報道をはじめ、新しい出生前診断の上陸など、高齢出産をめぐる話題が吹き荒れた1年でしたが、こうした議論の起きたあとの社会に向けて上梓できることが嬉しいです。

人の命は永遠ではないこと、そして生まれてくる命にも完璧な命などあり得ないこと、そうしたことに社会が気づいていくのはすご〜く大事なことです。

内容は、35歳以上の妊娠から育児まで。加齢による変化、不妊治療、出産、出生前診断、産後、育児などその時々に起きる不安や迷い、誤解などについてその道の第一人者や国内外の報告、経験者の声などを集めています。

たくさんの35歳以上出産の方にお話を聞いて参考にしましたが、あまりにもドラマを持つ方が多かったのでちょっと言葉を引用させていただくだけではもったいなくなり、ストーリーで登場していただく頁も作りました。ここが多分、読む方にはかなり伝わるものがあると思います。不妊治療が必要になっても、帝王切開が増えても、先天異常の確率が増えても・・・それでも、子どもを得た人たちには「だから何ですか?」と言えてしまうような満たされた時間が流れていました。「人にはすすめません」と言いながらも、自分の出産には本当に納得していることがはっきりと伝わってくる、スケールの大きな女性たちにお会いすることができました。

先週は母性衛生学会という産婦人科と助産師さんの作る由緒ある学会で、この本の内容について一足早く、1時間も講演をさせて頂くというありがたい機会がありました。新しいパワーポイントのスライド50枚作り、晩産時代に向けて産婦人科がどのように変わっていってほしいか、女性から汲み上げたものを精一杯お伝えしてきました。

いよいよ師走。年があければ時間はつるつるっと過ぎてしまうでしょうから、年内にできるだけこの一冊を進めなければなりません。新しい出生前検査についても妊婦さんの声をどんどん出そうといくつかの企画が進行中なので、そのことと、でき得れば今年中に新書のゲラを手にしたいということが年内の目標。


伝説のフリースタイル出産 2012/07/04

「伝説のフリースタイル出産 Tシャツ」なんて銘打ってしまって、REBORNで久々のグッズ販売です。

日赤医療センターの助産師さんたち中心に結成されたネットワークJIMON(ジモン)とREBORNのスタッフは、かつて「分娩台の上で姿勢を固定されない自由な出産を広めたい」とワークショップなどいろいろなことをいたしました。そのころ、ジモンで作ったこの Tシャツを、みんなで着ていたものです。

私もあのころはバースポジションにとっても熱い気持ちを持っていて、生後三ヶ月の第三子を片手に抱いて助産院に寝泊まりし、フリースタイル出産のビデオを撮りまくったりしました。

あれから15年以上経つのだけれど・・・

いまだに多くの方から「最近は分娩台に寝ないお産もあると聞いてびっくり」と言われます。

でも、これも院内助産院の浸透と共に、状況はじわじわと変わっていくのでしょう。よろしければ、 Tシャツご利用下さい。

こちらから
http://rebornshop.cart.fc2.com/ca3/57/p-r3-s/