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大学病院の一日 2007/06/15

梅雨空の中、『助産師と産む−病院でも、助産院でも、自宅でも』の最後の校正をかばんにつっこみつつ、「AERA with Baby」のための大学病院の取材で一日過ごしました。

私はやはり助産院な自然出産の病院に出入りすることが多いので、大学病院の一日は現実の厳しさを感じるものでした。大学病院と助産院では、産みに来る女性たちの陣痛に対する不安がだいぶ違います。病院でも不安を乗り越えるための夫立ち会いやクラスはおこなわれていて、それを役立てうまく陣痛の波に乗っているカップルもいらしたのですが、やはり全員ではない。

この病院では、私がいつも麻酔のことを教えて頂いている周産期麻酔の専門である麻酔科医の照井克夫先生がいらっしゃるので、硬膜外麻酔もさかんにおこなわれています。麻酔の効きはすごいものがありました。そのかわり陣痛が弱くなりがちで、赤ちゃんを器具で引き出す鉗子分娩になる人が多いのですが、それでも、かなり陣痛恐怖の強い方が選択しているのでそれは納得していらっしゃるようでした。

照井先生は、日本の温かい医師ベスト10に絶対に入るか?と思ってしまう優しい先生で、この方の存在自体が麻酔のような、まるで「人間麻酔」のような方です。麻酔をした人はいきみが難しいのですが、照井先生が分娩室に現れバッ!と産婦さんに寄り「よくがんばりましたね」と手をしっかり握る姿には感動しました。無痛分娩は全く痛くないわけではないし、もともと出産不安の強い方がしているので麻酔が効いたあともお顔は不安な感じなのです。

こわい、こわい、と思いながら産むのも現代ではしかたがないかもしれません。お産の時だけ身体的になれ、という主張は、やはり一部の人にしか届かないものだと思っています。通常の会陰切開より大きい鉗子分娩の裂傷を引き受けるのなら硬膜外麻酔という選択もあるかもしれません。産後は分娩台で二時間赤ちゃんを抱いているのですが、その嬉しそうな安らかな表情は自然も無痛もないように思われました。

そして「自然に産む」ということがいかに難しいか、痛感。



『助産師と産む』脱稿しました 2007/05/23

昨日、やっと岩波ブックレット『助産師と産む−病院でも、助産院でも、自宅でも』の本体がかたまり組む段階に入りました。週末に1校が出てあとは細かい仕上げでできあがりです。

今朝はぐーんと気持ちが落ち着いて、仕事も、家の中も、いろいろな仕事片づけたいモード全開です。朝からおなべをがんがん洗いました。

日記を見ますと、4月7日の日記で「ブックレットに集中し始めてきました」などと書いてあるので結構長くやっていました。今の助産師さんは論争の激しい微妙な問題が多いので、それが、時間がかかった最大の理由だったと思います。あちらにもこちらにもお待ちをいただいてしまった5月でした。

それでも朝日新聞育児ファイルの連載も続けられ、めでたく今週で最終回にこぎつけます。季節も最高だし、ともかく今朝は「やったー」という気分でいっぱいです。


ちょっと脱出 2007/04/07

かなりブックレットに集中し始めてきました。といってもまもなく締め切りです。そんな週末、朝6時に家を出て春の海へ。三浦半島の突端・城ヶ島まで行きました。

城ヶ島の灯台を仰いで磯へ。人体の中、肋骨あたりをを思わせる大きな岩が連なっています。きれいな海水がそれを洗っていきます。そこに寝てお日様を浴びて、そして目を閉じて、空と海と水の音を聞きました。

ここでは、波の音が風の音にそっくりなことに気づきました。岩が形作るたくさんのくぼみに水が入り、ぐるぐる、ぐるぐると回って、水のつむじ風?水と風と太陽をたっぷりと吸収してきました。

入船という海に面するお店で朝ご飯。「朝の風を入れてあげるわねー」と、お店のおばさんが窓をあけてくれると優しい風がさーっと入ってきました。まもなく頭と尾がビクビク動くアジのたたきができあがり、子どもと必死に「いただきます」と手を合わせます。

おみやげに、お店の前に咲いている花を株分けしたサザエの植木鉢をいただいて感激でした。