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「産めよ増やせよ」はここから始まった 2016/02/17

晩産化についての仕事が多い私は、かつて国家が兵力増強を目的に「早く結婚しましょう、そして若いうちに産みましょう」と言っていた時代の歴史が気になり、折に触れて情報を集めてきました。

その時代の早婚奨励、多産奨励と今の少子化対策ではどこがどう違わなければならないのかを、常に考えていきたいからです。

結局、今でも「労働人口の減少」「少子高齢化」を避けるために国は少子化政策に晩産化や不妊対策を盛り込んだのですから、実際のところ、その線引きはそんなに明瞭な線にはなり得ません。「いいえ。今の"ライフプラン教育は『産めよ増やせよ』とはまったく違うものですよ」なんて誰にも言えないと私は思っているのです。

ひとつの謎は、あまりにもよく使われる「産めよ増やせよ」というコピーがどこから来たのかということでした。それが、今、母子保健法制定50周年を記念して国立公文書館で開かれている企画展「生まれた。育てた。-母子保健のあゆみ−」でわかりました。内閣府情報局が国策の一環として発行していた『写真週報』昭和17年4月29日号に掲載された「これからの結婚はこのやうに」でした。そこで謳われた「結婚十訓」の十訓目が、以後マスコミで展開されたキャンペーンの典拠となったそうです。

「結婚十訓」

一 一生の伴侶として信頼できる人を選びませう
二 心身共に健康な人を選びませう
三 お互に健康証明書を交換しましょう
四 悪い遺伝の無い人を選びませう
五 近親結婚は成るべく避けることにしませう
六 成るべく早く結婚しませう
七 迷信や因襲に捉はれないこと
八 父母長上の意見を尊重なさい
九 式は質素に届はすぐに
十 産めよ増やせよ國のため

日本では、こうした非人道的な妊娠政策がとられた歴史があり、その終結も国際的に見てかなり遅く、かつ曖昧でした。ですから、長い間、出産年齢や遺伝は、触れなば直ちに反対運動が起きる「タブー」とされて不妊対策が遅れたように思います。

また出生前診断についても検査を水面下に潜らせ、遺伝カウンセリングの整備を送らせる要因となりました。

企画展は、明治から今日に至るまでの母子保健の流れを全体的に紹介していて他にも興味深い展示品がいっぱいありましたが、妊娠教育が各地の自治体で一斉に開始された今、この時期に、戦時下のこの問題が実物をもってわかりやすく示されたのは意義があることだと感じました。


海と空と石と 2016/01/24

滑川市では私は「海が見たい」とわがままも言い、同市立博物館学芸員の近藤さんに漁港入り口の灯台付近を案内していただきました。

季節によってはホタルイカが光ったり、蜃気楼が出たりすることで有名なこの海。たくさん転がっている丸石は、もとはといえば三千メートル級のアルプスから早月川が落としてくる大岩だそうです。それが急流で砕かれ、やがて海に着く頃には小さくなり角も取れて丸い小石となるのです。

波打ち際ではぎっしりと並んだ小石が転がり、まるで無数の小さな生き物でもいるようにちゃらちゃらちゃらちゃら・・・と鳴り続けていました。「礫浜(れきはま」もしくは「石浜」というのだそうです。

向こうに見える海は見たことがない色をしていました。そして「鉛色」とよく表現される、日本海に独特な空。石はとてもいろいろなものがあって、その中から、雲母のキラキラがたくさん入ったまん丸な花崗岩をひとつ、浜からいただいて持ち帰りました。

長女が大好きだったレオ・レオニの絵本に『はまべにはいしがいっぱい』という本があります。不思議な石の鉛筆デッサンが延々と続く本なのですが、まさか本当にこんな浜があるとは。

漁港をあとにしてからは、北陸街道の宿場町として栄えた滑川の古い町並み「宿場回廊」や、滑川の歴史と自然がわかる滑川市立博物館を見学させていただきました。


早月中学から届いた感想文 2016/01/24

滑川市立早月中学校から、生徒さんたちのすばらしい感想文が届きました。
以下は、私が読みながらまとめた要旨のメモです。直感的、衝動的に始めた写真プロジェクトですが、写真が伝えたものは非常に大きかった・・・思ったとおりです。
そして、私のような3人の子の思春期も受験も終えた者が語ったことも、親との関係がデリケートな十代の心は何かを感じてくれたようです。
実は滑川市では助産師さんによる「命の教育」をみんな受けています。私の話はその次にジャーナリストで写真も撮っている人が来たよという感じで行き、不妊、晩産化、少子化の授業をした形です。感想を読むと、この組み合わせが大変よい効果を生んでいることもわかりました。
出産についての教育は、このように複数の職種で、シートを何枚も重ねていくように進めていくことが大事なのかもしれません。

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・妊娠なんて何にも関心がなかったし、まだまだ先のことだし、ただの一度も考えたことがなかった(この声、非常に多数)。

・でも、聞いたら大事なことだった。今日は初めて親の立場に自分を置いた。今日は親になることを考え始める一歩を踏み出せた。
10代からできることがあった(ハード過ぎる部活による無月経に気をつけるなど)。

・子どもは大人になれば誰でも自然に生まれると思っていて、産みたいのに産めない人もいるなんてびっくりした。赤ちゃんは本当に授かりものなんだ。そして生まれることができた僕の命も貴重なもの(この声、かなり多数)。

・親になるのは大変なことだけれど、それ以上に喜びがあることがわかった。写真を見たら、生まれたらあんなに喜ぶんだと思った。
 私はお母さんになるのは不安だった。すごく痛いって聞いていたから子どもは産みたくないと思っていた(この声、かなり多数。会場で聞いたときも子どもが欲しいと手を挙げた子は少数だった)。けれど、写真に出てくる人がとても幸せそうだったから、やっぱり私も産みたい。産む自信が出てきた。

・お母さんが自分を産むときにがんばってくれたことに感謝(かなり多数)。お母さんが自分やきょうだいを産むときに経験した流産や帝王切開、早産のこと。(お母さんの年齢が高い子)お母さんは高齢出産だったけれどがんばって僕を産んでくれたからありがたい。(お母さんが若い子)お母さんは若いときから産んでくれたから私にはきょうだいがたくさんいて楽しい。

・写真に写っていた助産師さんたちは第二の母親のようだ。いつも緊張の中にいると思うけれど、すごい。かっこいい。こういう人がいるのなら安心だ。(自分にはできないという声と自分もなりたいという声が半々)

・少子化がこれからどんどん進むことがわかった。国の推計を知ってびっくりだ。それに、単にいやだから産みたくない人が増えただけだと思っていたけれど、実際には、こんないろいろな真実や思いがあったのか。産みたいのに産めない人、ためらってしまう人も多いんだ。少子化を止められる社会にすべきだ。子どもを産む人にもっと温かい社会は何か考え、人々の意識を変えることが大事だ。

・妊娠や出産では悩んでいる人がたくさんいるとわかった。不妊治療をしても妊娠しなかったり、流産を繰り返すなんてすごく悲しいだろう。もっと悩んでいる人を助けてあげるべきだ。(男子)僕は男だから産まないけれど、その時には女性を一生懸命支えたい。

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中学生という年齢の子どもたちからもこのような言葉が出てくることを、たくさんの方に知っていただきたいと思います。