『パワー・オブ・タッチ』 フィリス・K・ディヴィス著 三砂ちづる訳 2003年 メディカ出版 ¥ 2,940(税込) ISBN978-4840408042
◆The Power of Touch
本を開くと、冒頭にまず『わたしにふれてください』という詩があります。 この詩は2000年、JICAブラジル家族計画・母子保健プロジェクトのニュースレター『セアラだより44号』に掲載され、日本に届けられました。ブラジル での「人間的なお産」に向けたトレーニングの場で、現地の看護婦が朗読し、それを三砂ちづるさんが日本語に訳されました。 この詩を読み多くの人が涙しました。 アメリカ,ドイツ,ブラジル,インドネシアなど7ヶ国で出版され、多くの人の心を癒すメッセージです。 日本でも、助産師さんや子育てグループの集まりで朗読されるようになり、人から人へ伝わっていきました。 普 段、「わたしにふれてください」などとは口にしない私たち日本人。「抱っこして」「肩を抱いて」「手を握っていて」とも、なかなか言い出せない。だから、 詩を声に出して読んだとき、体の奥底にしまいこんでいた切なる願いが溢れ出たり、やさしいぬくもりが体中に蘇ってくるかのようです。 痛いとき、イライラするとき、悲しいときもうれしい時も、そっと抱きしめられたら、あたたかくて癒されて、体がほくほくしてくる。それは赤ちゃんも大人も同じ。 優しくふれることやHUGは誰にでもできる簡単なこと。その簡単でシンプルな「ふれる」を、もっと自分のものにできたら、もっと家族や職場でも愛を伝えていけるでしょう。 この本は、愛情のこもったタッチの力、実例と手技をわかりやすく紹介していますが、ノウハウ本とは違います。 子どもを抱きしめたくなるし、遠くにいる両親のことを思う・・・・・そんな気持ちがしてくる本です。 まえがきにはこう書かれています。 「この本は、ふれるということについて十分な科学的調査を行った本ですが,同時にとても個人的な本である,とも言えます。この本は,私を含めて他者を通じて,あなたがあなた自身の人生に踏み出すことを目的としています。」 (REBORN・熊手麻紀子)
目次 第1章 ラビング・タッチ——「ふれる」という愛 第2章 「ふれる」という感覚について 第3章 幼い子どもにふれる必要性 第4章 赤ちゃんのニーズにこたえる 第5章 「ふれる」ことを求め続ける 第6章 「ふれる」ことへの制約 第7章 タッチ剥奪の影響 第8章 性的なタッチとセックス 第9章 癒しのタッチ 第10章 タッチと仕事の場 第11章 助けとなるタッチ 第12章 タッチしてみましょう——いくつかのヒント 第13章 最後に わたしにふれてください もしわたしがあなたの赤ちゃんなら どうぞ、わたしにふれてください。 今までわたしが、知らなかったやさしさを あなたからもらいたい。 あふろにいれてください、 おむつを替えてください おっぱいをください きゅっとだきしめてください、 ほおにキスしてください わたしの体をあたためてください あなたのやさしさとあなたのくれる快楽が わたしに安心と愛をつたえてくれるのです もしわたしがあなたのこどもなら どうぞ、わたしにふれてください いやがるかもしれないし、拒否するかもしれないけど、 何度もそうしてください わたしがどうしていやがるかわかってほしいから おやすみなさい、と抱きしめるあなたの腕が わたしの夜を甘くしてくれる 昼間にみせてくれるあなたのやさしさが あなたの感じる真実を伝えてくれる もしわたしがあなたの思春期のこどもなら どうぞ、わたしにふれてください もう大きくなったのだからなんていわないでください あなたがわたしにふれるのをためらうなんて 思いたくない あなたのやさしい腕が必要です あなたのおだやかな声をききたいのです 人生は困難なもの、とわかったいま、 わたしの中の小さな子どもがあなたを必要とするのです もしわたしがあなたの友達なら どうぞ、わたしにふれてください あなたがだきしめてくれると、 わたしはあなたにとって大切な人だとわかるから あなたのやさしさが、おちこんでいる私も、 かけがえのない存在であることを 思い出させてくれるから そしてひとりではない、と思い出させてくれるから わたしにやすらぎをくれるあなたのありよう、 それだけがわたしが信じられるもの もしわたしがあなたのセックスの相手なら そうぞ、わたしにふれてください あなたは、情熱さえあれば、十分と思うかもしれない でも、あなたの腕だけが、わたしの恐れをとかしてくれる あなたのやさしくおだやかな指先をください あなたにふれられて、わたしは愛されているということを 思い出すことができる わたしはわたしなのだ、ということを 思い出すことができる もしわたしがあなたの大きくなった息子なら どうぞ、わたしにふれてください わたしには、 抱きしめるべきわたしの家族はいるのだけれど それでも、傷ついたときには おかあさんとおとうさんにだきしめてほしい おとうさん、あなたといるとすべてが違ってみえる わたしが、大切なわたし、であると 思い出すことができる もしわたしがあなたの年老いた父親なら どうぞ、わたしにふれてください あなたが小さかったときに わたしがあなたにふれたと同じように わたしの手をにぎり、わたしのそばにすわって わたしを力づけてください わたしの疲れた体によりそい、あたためてください わたしは随分しわくちゃになってしまったけれど あなたのやさしさに力づけられる どうぞ,何も恐れないで ただ、わたしにふれてください ——フィリス・K・デヴィス 原作者Phyllis K.Davis、翻訳者三砂 ちづる
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