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「家庭の味」の戦後民俗誌―主婦と団欒の時代 矢野敬一著  青弓社  3,570(税込)   ISBN978-4787220219

◆味噌造りも郷土食も近代家族の成立と関係があったとは

ふるさとの味、郷土食、名産品、家庭の味というものが、実は高度経済成長期に農村の女性の「主婦」化のためにできあがっていったものであることを述べた民俗学書。「郷土食」や「新農村料理」も味噌の自家醸造も料理ノートの作成も、政策的介入として指導されたもので、これによって農村の女性は「家庭」の「主婦」役割をもつようになる。「伝統」と思っていた食の歴史的からくりがわかる。新潟県のある町をフィールドにした民俗学、近現代史の良書。

(REBRON 白井千晶)


表紙より

紹介ポジティブなイメージとして語られる高度成長期に農村部で拡大した自家製味噌造りや調理方法のリテラシー、旧正月から新正月への移行などを題材に、戦中から戦後に編成されていった「主婦」「家庭」という規範を読み解き、日常生活の変容の実相に迫る。

目次

目次

第1章 ふるさとの味をめぐる戦前──高度成長期前史の農村女性
はじめに
1 地方の食へのまなざしと「名物料理」
2 大正期の代用食論議と地方へのまなざし
3 栄養への関心と「新農村料理」
4 「郷土食」と「国民食」
おわりに
第2章 「主婦」役割の編成と味噌自家醸造法の改善指導
はじめに
1 改善指導前の味噌の社会的布置
2 味噌をめぐる認識の布置の再編成
3 味噌醸造の場での社会的関係性と「主婦」役割の意識化過程
4 生活改善実行グループと多様な食の世界の広がり
おわりに
第3章 調理の習得とリテラシー──「主婦」役割の受容と「家庭」意識
はじめに
1 調理の習得と変容する台所
2 農村女性とリテラシーへの回路
3 「おかず帳」と多様な料理への回路
4 高度成長期と農村女性
おわりに
第4章 旧正月から新正月へ──「家庭」中心の年中行事への移行
はじめに
1 旧正月から新正月へ
2 生活世界の拡大と新正月への移行
3 焦点としての「家庭」
おわりに
第5章 お盆の戦後──帰省ラッシュ・成人式・盆踊り
はじめに
1 藪入りから帰省ラッシュの時代へ
2 盆と成人式
3 盆踊りの高度成長期
おわりに
第6章 「名物」の味/「家庭」の味──端午の節句と笹団子の現在
はじめに
1 笹団子の名産品化と表象される「新潟」
2「米どころ新潟」と笹団子
3 山北での笹団子の受容と現状
4 菖蒲の節句
行事の再編成
おわりに
あとがき
索引

著者プロフィール

矢野 敬一(ヤノ ケイイチ)1963年、札幌市生まれ。静岡大学教育学部准教授。専攻は日本民俗学、近・現代文化史。著書に『写真家・熊谷元一とメディアの時代』(青弓社)、『慰霊・追悼・顕彰の近代』(吉川弘文館)、共著に『浮遊する「記憶」』『戦死者のゆくえ』(ともに青弓社)、『記憶』(朝倉書店)など。

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「家庭の味」の戦後民俗誌―主婦と団欒の時代 (越境する近代)


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