『急がされる子どもたち』 デイヴィッド・エルカインド著 戸根由紀恵訳 紀伊國屋書店 ¥2,415(税込) ISBN978-4314009126
◆子どもたちに、もう一度「子ども時代」を我が子が将来優秀な成績を収めるには・・・と、親は、ついつい早期教育に走ってしまう。米国には、幼稚園から成績によるクラス分けがあるところも登場しているとか。 昔から「神童は大成しない」と言われて来たのに、競争が加熱し、ゆっくりしたものに「容赦しない」社会はそんなことなど忘れてしまったようだ。かくいう私 も、この本を読んでいると、自分も子どもを急がさせている気がしてきた。「うちの子は、金子みすずの詩に出てくるような、あんな時間を持っているかしら?!」と気になり始めて、この本を読んでいるあいだはしばしば彼女の詩集を引っ張り出した。 著者は、発達心理学者だ。早期教育の弊害をたくさんの例、学説を総動員して解説していく。「現代社会にあっても、子どもが大人になっていくのは時間のかかる 仕事であり、急がさせるのは不可能だということだ。子どもは、年齢に応じて何段階も経て大人になっていく。どの段階でも、知的な能力、感情面での成熟、社会性でめざましい変化がある」 この本の面白さは、さらに、子どもを急がせるものとして、離婚と単身家庭の増加をたっぷりとりあげていることだ。多くの単身世帯では、子どもは母親の対等なパートナー役、セラピスト役としても早く成熟しなければなら ない。この、心の深い部分での急ぎ方に較べれば、早期教育などかわいいものだと思えてくる。 子どもたちはつまり、混乱とあせりの中で、迷ったり疲れたりしている大人の鏡なのだろう。いま、この子たちに子ども時間を取り戻してやるには、親自身が自分自身の混乱に向き合い、ゆとりと自信を取り戻すしかないように感じた。 現 代では難しいけれど、子ども時代とは自分のことを思っても珠玉の時間であったし、子どもからとりたげくない。「・・・子ども時代は人生の確固たるひとつの 時期であること、そのあとから人生が始まる仮の時間などではないことを肝に銘じておかなくとはならない・・・本当に人間というものを大切に考えるならば、 人生のどの時期も等しくその価値を認め、その時間にふさわしい生き方をしなくてはならない・・・子ども時代とは、子どもに人間として与えられたもっとも基 本的な権利である」 (REBRON 河合 蘭) オビから その荷物は、子どもには重すぎる! 早期教育、スポーツクラブや習い事、試験漬けの学校、両親の離婚・・・ この本が買えるページ amazon.com |
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