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『チャイルド・ライフの世界――こどもが主役の医療を求め』 藤井あけみ著  新教出版社 2001年  ¥1,995(税込)   ISBN978-4400527121

◆CLSのパイオニアが日本の小児医療を問う

「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」(以下、CLS)とは、闘病や慣れない病院生活の中で子どもの精神的負担をできる限り軽減し、子どもの成長 と発達を支援する専門職だ。仕事の内容は、遊びの援助、子どもの理解力に応じた医療行為の説明、治療における精神的サポート、親やきょうだいへの心のケア など多岐にわたる。
子どもを“ひとりの尊厳ある存在”として捉えて、その心に寄り添い、子どもの目線に立つことを理念として、1950年代から北米を中心に発展してきた。

医療スタッフの一員だが、医療行為はしないため、子こどもにとっては「痛いことをしない安心できる存在」であり、医療者とこどもとその家族との間のコーディネーター的な役割を果たすという。現在、アメリカやカナダの主だった病院の小児科では、CLSが働いている。

難病の治療も可能になった現代だが、日常生活とかけ離れた環境で長時間過ごさざるを得ない子どもの心のケアは決して十分ではない。自分が受ける医療 行為に対して、選択も納得もないまま「まな板の鯉」にされてしまったら、病気は治っても、子どもの心には無力感しか残らないのではないか。
アメリカで資格を取得し、日本の病院で働く著者の小児医療への問いかけはお産と重なることも多く興味深い。

CLSの資格は、まだ日本では取得できないため、CLSを目指す人たちはアメリカ、カナダ等で勉強をし、資格取得をすることになる。そのため、まだ 日本ではCLSの資格取得者は少ないが、最近では、日本でもCLSがが常駐する病院が全国で5カ所になった。安心して、子どもたちが治療を受けられるよう にCLSの輪が日本でも広がることを願わずにいられない。


オビから

小さないのちの尊厳
病と向き合うこどもと家族
入院治療中のこどもたちを精神的にサポートする医療専門スタッフ――チャイルド・ライフ・スペシャリスト。アメリカでチャイルド・ライフを学び、正規のトレーニングを受け、現在は名古屋の病院でチャイルド・ライフ・プログラムの実践に取り組む著者は、こどもの視点に立った小児医療とは何かを問いかける。

本文より

アメリカとカナダのおもだった病院の小児科には、チャイルド・ライフ・スペシャリストという専門家が働いています。この人たちは普段着を着て、色とりどりのおもちゃや絵本を持って歩いています。客観的に見てアメリカの病院がなぜ明るいのは、この人たちの存在によるところが大きいのです。(「はじめに」より抜粋)

目次

1 チャイルド・ライフの世界
死を闇から光の中へ
親と子のストレス解消法
BGMは海の色
水の妖精
はじめての水彩画
兄弟姉妹
ピンクのきょうりゅう
こどもの人生をこどもの手に
温かいコーヒーとマフィン
ティンカーベル
幸福の条件

2 チャイルド・ライフ・プログラム
チャイルド・ライフ・プログラムの理念
チャイルド・ライフ・プログラムの目的
チャイルド・ライフ・プログラムの成立
チャイルド・ライフ・スペシャリストの仕事
チャイルド・ライフ・プログラムの効果

3 プレイルーム一考察
聖域
見守るおとな

著者プロフィール

藤井あけみ
横浜市生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。1997年ミルズ・カレッジ大学院教育学部チャイルド・ライフ課程修了。同年、チャイルド・ライフ・スペシャリストとなる。大学院在学中より、オークランドこども病院、M.D.アンダーソンがんセンター、名古屋第一赤十字病院小児血液腫瘍科においてインターンを経験する。また、ミルズ・カレッジ付属保育園・幼稚園で実習を積む。帰国後、浜松医科大学病院小児科、名古屋第一赤十字病院を経て、2004年より宮城こども病院に勤務し、現在に至る。

■日本チャイルド・ライフ研究会 http://www.aa.alpha-net.ne.jp/alcedo/

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チャイルド・ライフの世界―こともが主役の医療を求めて


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