毎日新聞 2001年2月9日 生活家庭欄
お産 どこで どのように
「お産選びマニュアル」できる
妊婦自身が選ぶため
「病院」「助産院」の比較も
どこでどのように産むか、この10年間に出産方法は多様化した。しかし、どの施設でも方法を選べるわけではないし、どのような選択肢があるのかを知らない女性も少なくない。出産医療ライターの河合蘭さん(41)が、様々な選択肢を紹介した「お産選びマニュアル」をまとめた。母親4人がつくった妊婦自身が書き込む方式の「わたしのお産 サポートノート」も好評だ。どんなお産をしたいのか、妊婦自身が選ぶ時代を迎えている。 【小島明日奈】
ここ10年、妊婦にとって自然なお産が求められるようになり、助産院での出産が注目されるようになった。最後まで分娩台にあがらない「フリースタイル出産」や、出産直後からの母子同室は、導入する病院がでてきた。夫だけでなく家族全員で見守る立ち会い出産、助産婦の力を借りて、自宅で出産する人もいる。少子化の影響で、祝い膳などのサービスに力を入れるところもある。
河合さんは13年間に70カ所以上の出産施設を取材、その変化を見てきた。最近気になるのが、「部屋がきれい」「産声CDをもらえる」などのイメージで産院を選ぶ人がいること。「女性自身が、お産の中身を判断する物差しを持っていないからではないか」と河合さんはみる。
たとえば、赤ちゃんが生まれやすいように「会陰部」を切るかどうか。裂傷を避けるための処置だが、ほとんどのお産で切る施設もあれば、危険が迫ったお産だけ切る施設、また、マッサージなどで身体をリラックスさせたり、「会員保護」と呼ばれる手の技を使ったり、裂傷しにくい姿勢を指導するところもある。母乳指導についても、母乳しか与えない施設から、入院中粉ミルクや糖水を足すところ、またその足し方にも施設ごとにいろいろ差がある。
「今は、たまたまかかった医師の考えに従う人も多いが、それが合わないこともある。話し合える施設も増えた。妊婦さんが選択肢を知り、どんどん声を出していけば、医師らの取り組みも変わるはず」
「お産選びマニュアル」では、病院出産と助産院出産双方のメリット、デメリットを、中立的な立場で説明することに努めた。陣痛促進剤や帝王切開などについても具体的にいろいろな専門家の考えを解説。巻末には、全国320の病院、産院、助産院、出張開業助産婦に会陰切開率や母子同室の開始日、夫が立ち会えるかどうかなどを聞いた「知って選べる全国産院の詳細情報」もある。
時事通信より全国の地方新聞に配信された記事です。
◆見出しは新聞によって違い、下記は、中国新聞 2000.11.29のものです。
どんな出産望みますか
「マニュアル」出版 河合さん
「自然の良さ」と「医療の安心」と両方の良さ生かそう
夫の立ち会いなど主張伝えて
大病院での高度医療によるお産から助産婦さんによる自宅出産まで、さまざまな選択肢の中から、自分がどんなお産を望むのかを積極的に考えてもらおうと、出産医療ライターの河合蘭さんが「お産選びマニュアル」を出版した。河合さんは「お産の現場は今、本格的な変革期にある。きちんとした情報を基に、医療者に自分の思いを伝えていってほしい」と訴える。
河合さんは十三年前から、お産や母乳育児をテーマに取材を続け、七十カ所を超す出産施設に足を運んだ。大病院から個人産院、助産院と、規模はさまざま。医療者の考えによってもお産の姿は大きく異なっていた。
最近では水中出産やアクティブバースなど、産婦が本来持つ力を、できるだけ生かそうとする取り組みも進んできている。
しかし、お産に関する情報は、こうした新しい出産のスタイルを紹介する本と、産科医による実用書的なお産解説本とに両極しがち。現場でも、自然出産の良さを生かしながら医療技術にも守られるお産、という選択肢は生まれにくい。
河合さんは「お産はイデオロギーではないのだから」との立場から、産院や医療に関する選択肢のメリット、デメリットを、医学的な評価をふまえて、丁寧に紹介した。
自身は十四年前、近所で評判のよかった病院で第一子を出産。その時は満足したが、後で会陰切開や授乳の手順などについて別の考え方があると知り、二人目、三人目は助産院で産んだ経験を持つ。
最近は産院選びの手がかりとなる医療情報が少しずつ公開されるようになり、女性グループなどによる情報本もまとめられている。河合さんは@夫の立ち会いが認められているかA早期からの母子同室が可能か−を「フレシキブルな産院の目安」ととらえ、全国三百二十施設の産科医療者数や、会陰切開率などのデータを掲載した。
「二、三年前は、お産の情報を提供しても、行き場がなかったが、受け皿は増えてきた。夫の立ち会いにしても、産婦が望めば医者も認めざるをえなくなっている。勇気を持って主張することで、その後の人生も変わってくるのではないでしょうか」と河合さんは話す。農文協刊、一五二四円
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