Birth Library

本を読んで会いたくて


レスリー・ページさん


生まれ変わる助産婦たち』
監訳 青野敏博 訳 佐野伸子/青野冴子/佐藤慶子/竹内美恵子
医学書院 ¥3605

    
 英国では、1993年、厚生省が「チェンジング・チャイルドバース」と呼ばれる画期的な出産改革方針を打ち出した。生まれ変わる助産婦たち』は、その改革を解説したもの。編者レズリー・ページさんが徳島大学の招聘により来日された際にお会いした。 by 河合蘭

●英国政府のお産革命”チェンジング・チャイルドバース”


河合 まず、英国政府のレポート「ウィンタートン報告書」「カンバーリッジ報告書」についてお聞きしたいのですが、これはどこから出されたのでしょうか。
ページ ウィンタートン報告書は、1992年、英国議会下院から出された勧告です。その後、具体的な政策は厚生省の手ににゆだねられました。厚生省は、これをどう扱ってもよかったのですが、たまたまカンバーリッジという大変情熱のある女性がいて、この方ががんばりました。まずエキスパート・マタニティ・グループというものを組織し、国中のマタニティ・サービスを視察し、ウィンタートン報告書の内容を検討したのです。私もメンバーで他には、医師、ジャーナリスト、ナショナル・チャイルドバース・トラスト(英国の大きな母親グループ)の人などがいました。結論はウィンタートン報告書の全面的な肯定でこれがカンバーリッジ報告書または”チェンジング・チャイルドバース”と呼ばれているものです。
河合 内容としては、・女性がケアを選べること・決まった人がずっと診てくれること・女性が支配できること..と三本の柱があったようですね。そして、そのような介助の適任者は助産婦であると。
ページ そうです。それにそって、具体的な行動目標が掲げられています。「75%の女性は顔見知りの介助者に診てもらう」「30%の女性は、助産婦がメインの介助者になる」「すべての女性は自分のカルテを所有するべき」などで、これらを5年以内に達成するべきだとしています。
河合 世間は報告書をどうとらえていますか。
ページ 今では社会にも、医師にもこうした考え方が受け入れられるようになりました。綿密な調査・研究をおこなったからです。


●顔見知りの関係が、とても大切


河合 ページさんはロンドンのテームズ・ヴァレー大学教授でいらっしゃいますが、開業助産婦さんとしてのお仕事もなさっていますね。
ページ ええ、私は、ひとりの女性を受け持ち、出産を介助してこそ、助産婦になった意味があると感じるのです。自分でやっていないと、うまく教えられないような気もします。年間12件だけ、英国に来たばかりで経済力もない方を引き受けています。私がどうしても行かれないときはパートナーに行ってもらいますが、8割は私が介助しています。一定の人が診続けることの大切さは、報告書でも大変強調されました。女性は助産婦を好みますが、それは顔見知りの助産婦を好むのです。私自身、45歳で初めて妊娠してすばらしい出産を体験しましたが、私の医師と助産婦はとてもいい方でした。医療者との人間関係がどんなに大切か、本当によくわかりました。女性の支配ということも、この基盤がなければあり得ません。
河合 REBORNの読者は、日本でも英国のような改革が実現することを望んでいると思います。最後に、メッセージをいただけますか。
ページ お産が変わることはとても大切なことですね。今私たちは、変化のスピードがとても早い、とても大きな世界的社会変革の中にいます。日本も必ずその影響を受けると思います。  

(通訳/カリー松橋)

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